任務
いわゆる異世界転移する前の世界の話
色々設定がありますが、流して読んでいただければ
そして、少し長いです。
とある地方都市のショッピングモール
ショッピングモールのロゴが入ったジャケットを着た男女二人組が、見回っている。
休日のショッピングモールはいろんな場所で小さなイベントが行われていた。
自分はこういうモールって行ったことないな~と思いながら必要以上にキョロキョロしてしまう。隣で先輩が「お前、色々見すぎ」と小さく注意する。
「え~フウト先輩はこういう場所来たことあるんですか?」
明るい茶色に脱色し、肩まである髪を耳にかけながら質問するカエデ。
もちろん、耳にはインカムがついている。
フウトと呼ばれた先輩刑事は、呆れた表情をしながらカエデの方を見る。
「おまっ、こういう場所は普通はあるだろ~。俺は学校の帰りに友達と一緒に色んなもの食べに行ったぞ」
「へぇ~、フウト先輩って食事するんですね?」
「いやいや、俺は光合成で生きてる訳じゃないからな。この仕事は忙しいからゆっくりと食事している時間がないだけで…。健全な高校生はガツガツ食うぞ」
フウトはどちらかというと華奢で顔も整っているため、女性客とよく目があるようで、カエデと会話しながらも目が合う客に「っらしゃいませ~」と声をかけていた。
カエデは器用なヤツだと思いながら一緒に頭を下げている。
「あーそういえば、お前は帰国子女だったかな?向こうにもショッピングモールぐらいあるだろ?」
「そうですね。ありますが、車がないと行けないので。先輩の言う健全な高校生の年齢の時にはあまりいってなかったかも」
「そりゃ、かわいそうだな」
と思ってもいない棒読みでカエデの会話を流す。
「…。あまり思っていないでしょ?」
「ソンナコトナイデスヨ」
つまらない会話が進んでいくと、人気のない休憩所にたどり着く。
フカフカの椅子に自動販売機が数台おいてある。カフェで休憩するよりも気軽な場所だった。既に、小さい子どもがいる家族連れが腰掛けてゆっくりとした時間を過ごしていた。
そこには、小さいながらもキッズスペースも設けられておりジュースを飲み終えた子どもが母親に許可を貰ってから走り出した。
そのキッズスペースにはこのショッピングモールのマスコットキャラクターである
アナグマの形をしたぬいぐるみが中央に置いてあった。
「ここのショッピングモールのキャラクターってけっこう癖が強いですよね…。」
カエデもその子どもと一緒にキッズスペースに吸い込まれるように近づく
フウトの苦笑いが後からついてくる。
その後「っらしゃいませ~」と言ってるのが聞こえた。どれだけ、挨拶するんだろ。とカエデは面白がりながら聞いている。
そして、アナグマのぬいぐるみを触ろうとする子どもを見ながら
「ところで先輩、ここのキャラクターってセレブなんですね?めっちゃキラキラしているブローチみたいなやつが襟の間についていますよ?」
カエデがぬいぐるみを指さしながらフウトに質問してきた
フウトも、ん? と言いながらカエデの指さした方を見る。
すると、大声で
「カエデ!それ違法魔石だ! 子どもを遠ざけろ!触れると爆発するぞ!」
その言葉に子どもの家族と、カエデは驚いたがすぐにダッシュをしてから子どもよりさきにぬいぐるみを持ち上げ走り出す
「あっおねーちゃん、それ僕がナデナデしたかったのに!」
カエデはぬいぐるみをもちあげながら
「あー、ごめんね。変わりに向こうから走ってくるおにいーちゃんをいっぱい撫でてあげて!」
と言いながらぬいぐるみに結界を張って人気のいない場所まで走り出した。
「おい!カエデ! 俺は、そのぬいぐるみよりもかわいいが、男児になでられる趣味はねぇ」
と言いながら子どもを抱き上げ家族の近くに行きまとめて結界を張った。
「あっ先輩、私の結界の強度が足りないみたいです。あとヨロシクお願いします」
「おい!カエデ!」
カエデの言葉を最後にその場所で『ポンッ』小さな爆発が起こった。
フウトは直ぐにインカムで本部に連絡をする。
「こちら、フウト・カエデ班、目標を確認、処理しようとしましたが違法魔石の威力が予想以上に大きかった為、カエデが魔力汚染されました。魔力処理班と家族の保護の応援を願います。」
報告した後、子どもの家族に魔力汚染がないかのチェックなどがある為しばらくここにいて欲しい旨を伝える。
そして、少し離れたカエデを見た。
最終的にカエデは周囲に結界を張ったので建物全体が魔力汚染にさらされる事は回避されたがその分、魔力濃度が高い結界のなかをカエデがいなければいけなくなった。
「クッソ、あれだけ気を付けろって言ってたのに」
そして、自分のバディーに新人をつけるなって上司に文句を言ったのに。
「どうして、いつも守れないんだよ」
フウトは報告したばかりの無線機を握りしめて呟いた。
しばらくすると、魔力処理班が汚染場所を浄化し、カエデを専門の病院に連れていった。
フウトはもうしばらく聴取と現場の指揮をしなければならなかったのでカエデを見送ることしかできなかった。
夜、カエデが入院している病院に駆けつける。
すでに、カエデの両親が担当医から説明を受けて、ガラス越しに眠っているカエデを見つめていた。
フウトはすぐに、カエデの両親にご挨拶に行く。
「すみません。カエデさんのバディーをしている。シイナフウトです。この度は、娘さんをこのような状態にしてしまってすみませんでした」
ガバリと頭を下げたフウトを見て、カエデの母は眉を下げる。
「いいえ、こうなる可能性があることは理解していたので大丈夫ですよ。ただ、おもいの他早かったかなとは思いましたが。あの子、ボンヤリしていますからね」
とかつてのカエデを思い出すように話す母親
「私も、貴方達と同じ仕事をしていましたから危険性は分かっています。そして、カエデは適性があったから任命された。この国で生きていくには仕方がないことなのですよ」
カエデの母親はそっとガラス窓に触れる。
「意識がいつ戻るか分からないそうです。でも、今あの子の魔力が違法魔力に抗っています。シイナさんもあまり自分を責めずに次の任務をがんばってください」
そういうと、カエデの母親はフウトに向けて頭を下げた。
フウトはそれ以上何も言えなかった。
最後までお読みいただきありがとうございました。