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いわゆるセオドア回の続き
少し長めです。
公務から戻り、ケイト嬢と少しずつ距離を詰めた。彼女は父親から何か聞いていたのか嬉しそうに対応してくる。
そんななか、ジェフが人目に付かないところで私を呼び止めた。
「どうしたの?私のミシェルは元気かな?」
気の置ける仲間の前ではつい本音が出てします。
ジェフは苦笑いをしながら元気ですよと答えた。そして、私がいない間にケイト嬢がミシェルに接触してきた事を教えてくれた。女子同士ではよくある事だとは思うが、自分の大切な人がそのような事に巻き込まれると心が痛む。
「すみません。私が対応できれば良かったのですが」
ジェフが悲しそうな表情をする。私は肩を叩きながら
「仕方ないよ。学園内では平等と言われているけどそんな事ないからね~」
を私は軽い感じでジェフに言った。ジェフは驚きながら
「…。ミシェルさんと同じことを言うんですね」
と少し目元を赤らめて教えてくれた。私に惚れるなよ?
でも、嬉しい。ミシェルと同じ事を言えた自分が誇らしかった。
「私は、ミシェルを待っているが、ジェフも待っているよ。しがらみから抜けたらこちらにおいで」
そういうとジェフと別れてケイト嬢のご機嫌伺いに再び赴いた。
しばらくの間、次の婚約者になりたい女子生徒が何人かそばに寄ってきたがケイト嬢が綺麗に蹴散らしてくれた。少し面倒だったので助かった。
そんななか、父上からクレアシオン王国への短期の交換留学の話が上がった。
今回は私が行くことに決定したらしい。
何人か同行できるがどうするか聞かれたので、もちろんミシェルを連れていくと伝えた。
父上は少し驚いていた。多分、私の行動が筒抜けなのだろう。
「ミシェル嬢には確認しているのか?」
大丈夫なの?的な表情をしたので
「いいえ。彼女は私の婚約者ですよ?」
私が1カ月もこの国にいないのに一人残していくわけがないと説明すると
「では、ケイト・カイザー嬢にはどう説明するのだ?」
と聞いてきたので。
「彼女の考えている通りに説明しますよ」
とすました表情で答えると。
「怖っ」って言われた。失礼な。
「父上、少しお願いがあるのですが、サミュエル兄上をなんとかしてください。私とミシェルの何が気に入らないのですか?あまりミシェルに失礼な対応をするのだったら私にも考えがありますよ」
と軽く父上を脅しておいた。別に、この国に縛られる必要はない。いざとなったらミシェルを連れて本気でクレアシオン王国に逃げようかな。
父上は私の考えが分かったらしく。
「すまない。もう少し待っていてほしい」と言ってきた。
「別に、待つのは大丈夫ですがミシェルに何かあった瞬間私は持っている全てでサミュエル兄上に対抗しますよ?」
「それは、サミュエルも大変になりそうだな…。」
私は、話題を少しずらす
「そうそう私は、クレアシオン王国で魔法について少し学んでこようと思います。」
そういうと、父上は頷きながら
「よろしく頼むよ」と言った。
これは、メリディエスが魔法を忌避しているということを否定することになる。
つまりは、サミュエル兄上との意見が違うという事だ。
今の国王は父上だ、家臣がそれを知るとサミュエル兄上の立場が厳しくなると思う。
「ただ、私はその案件については公開する予定はありません」
「おお、ありが「今のところは」」
私は、父上の感謝の言葉を最後まで言わさずに言葉をかぶせた。
ここまで強く伝えておけば大丈夫だろう。
父上の隣にいた宰相の顔色は見なかったことにしよう。
父上もちょっと目元をハンカチで拭いていた。泣くなよ…。
こうして、短期留学の話は終了した。
明日、ケイト嬢に少し報告しておこう。面倒だが。
ケイト嬢は私のスケジュールをミシェルより先に知ることができて喜んでいた。
「セオドア殿下のお供は誰が行くのですか?」
ケイト嬢は当たり前の様に詳細を聞いてくる。通常なら私が出す情報が全てだ。必要以上に詮索してはいけない。
「…。ミシェル・バイヤーズが同行予定だ」
その名前を聞くとケイト嬢は顔を歪める。そして、すぐに悲し気な表情に作り変えた。
「そうですのね。お父様に言って交代させましょうか?」
ケイト嬢の父親は私の父上よりも権限があるんだなと思った。
「一応、王命なのでね」
連れていくと言い出したのは私だけどね。
私も悲しそうにケイト嬢を見た。イヤイヤ連れていくとでも思ったのだろうか
小さく溜息をついた後、私を同情するように見る。
「仕方ありませんわね。私は、この学園でセオドア殿下をお待ちしております」
「ああ」
そして、ケイト嬢が私の手に自分の手を乗せようとしたのでそっと避けた。
彼女は避けられた事に気づかず自分の手を持て余す。
どうして、私に触れると思ったのか理解できないがな。
しばらくすると、学園内で妙な噂が流れた。
不可思議な現象が起こるらしい。見えない壁ができたり、急に強い風が起こったり。
えっ?いやそれ魔法だから。魔法の知識が必要なくなるとみんな忘れちゃうのかな?
私は、あまりにも無知な学生たちをみて少し怖くなった。このメンバーの中で国を動かしていくのかと…。
そして、ここにも一人
「セオドア殿下、今流行っている不思議な現象に黒い魔力が見えるそうですよ?」
魔力の色などセンシティブな情報なので決して食堂という公衆の面前で話す内容でなないのだがケイト嬢は喜々として私に話しかける。いつもの様に話を聞き流していたのが間違いだったのか、生徒会の役員が私に所用があったらしく少し席を外して話をしているとケイト嬢がミシェルに対して、魔力の色とミシェルの髪の色が同じと言い出したのだった。
「チッ、余計な事を」
思わず舌打ちをしながらミシェルとケイト嬢の近くに行く。
ケイト嬢を傷つけないように結界を張りながら威嚇していた。
ミシェルの魔法はいまでも洗練されているんだな
と思いながらも私がフォローしたのはケイト嬢だった。
少しケイト嬢に対して嫉妬でもしてくれたらいいのに。私は醜い気持ちを抱いてしまう。
しかし、ミシェルはお似合いの二人だと言ってその場を去ってしまった。
レベッカとエリックに嫌味をいわれジェフは軽く目配せをしてからミシェルの後を追った。
私も行きたかった。一番に抱きしめてあげたいのに…。
行動と気持ちがバラバラで気がふれそうだった。
最後までお読みいただきありがとうございました。