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いわゆる7話以降のセオドアの回
セオドアはミシェルの細く長い指を支えながら、その白銀のブレスレットをそっと触った。ミシェルが言うにはこのブレスレットを外せるのは運命の人らしい…。
私は、そっとブレスレットを触りながら自分の魔力を込めた。本当はそんなことをしてはいけなかったが、ミシェルの運命の人になりたかった。
自分の手首についているブレスレットが小さく警告を出す。少ししびれる程度なので我慢する。
しかし、何も起こらなかった。私は、ミシェルの運命の相手ではないという事なのか…。
ミシェルは私の前髪をそっとかきあげると
「そうゆうことだから…。」と言ってきた。
初めてミシェルから触れられた喜びは次の拒否の言葉で天から地に落ちた気分だった。
ミシェルは私を捨てるのか…。
そんなことさせるわけないじゃないか。
その日はどうやって自室に戻ったのか覚えてなかった。
全ての歯車が意図的に噛みあってないような気がする。
苛立ちを押さえながらソファーに座る。
思い返せばミシェルの態度がおかしくなったのは謹慎処分を受けた日からだった。
いつもの溜まり場と呼ばれる場所でミシェルを待っていると以前ミシェルに絡んできた女子生徒が私に声をかけてきた。
私はミシェルとの懸け橋になればと丁寧な対応をしていると相手の女子生徒が少しずつ顔を赤らめてきた。風邪なのかもしれないなと思いながら話したのは覚えている。
その会話の中心人物だったのが、たしかケイト・カイザーだったかな。
正直どうでも良かったから記憶に残っていないな。
いつまでたってもミシェルが来ないので用事があると言って彼女たちと別れた。
その別れ際カイザーが
「また、殿下とお話しする機会が増えるかもしれませんね」
と意味不明な言葉を残していった。
気持ち悪いので帰って父上に確認したところ、私の公務のなかでカイザーの父親との会談があるとの事だった。カイザーでは仕事の話を娘にするのか…。情報統制が甘いなと思ってしまった。
渋い顔をした私に父上は
「気を付けなさい。大切な人はちゃんと守らないとね」
とウインクしながら言われた。そういうのは辞めてほしい。
「…。ご忠告ありがとうございました」
そして、カイザーの父親との会談では婚約者を変えた方が良いのではと訳の分からない事を言われた。なんでも、ミシェルは魔法派閥の最後の希望として扱われているらしい。
そして、それはサミュエル兄上に目を付けられる対象になるということも。
私は、微笑みながら進言してくれたことに対し感謝を述べた。
「私も、カイザー伯に何かお礼をしなければいけないな」
というと、一瞬ニヤッとした笑顔が見える。そして、すました表情に戻すと
「では、もしよろしければ私の娘のケイトと親しくしてやってくださいませ」
と言ってきた。
「ああ、そうしよう」
私は、綺麗に微笑んだ。
お前の希望を聞いてやろう。そして、私と私のミシェルを陥れようとする罰を嫌というほど味わってもらおうではないか。
「しかし、これはあくまでも学園内での行動にしたい。外野は静かにしてもらえるようにカイザー伯から手を回してもらえないだろうか?」
カイザーは私とケイトの婚約が見えたらしく、要望に二つ返事で了承した。
これで、カイザー派閥のミシェルが対抗できない奴らは口を出すことはないな。
後は、ミシェルは自力で対応するだろう。
ミシェルが相手を返り討ちにする様子を想像し思わず笑みがこぼれた。
それを勘違いしたカイザーは
「セオドア王子に気に入っていただけてケイトも喜ぶと思います」
そういうとその場を立ち去った。
「ああ、お前の言う通りにケイト嬢の傍にいようではないか」
愛おしいミシェルを確実に手に入れるためにな。
最後までお読みいただきありがとうございました。