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処分内容を変更しました。
(旧)前半→3カ月の停学 後半→1カ月の短期留学
(新)前半→1カ月の短期留学 後半→2カ月の停学
停学と短期留学を入れ替えました。 2024.3.10
三人と別れたミシェルはそのまま学園長室に向かった。
この部屋も久しぶりだなと思いながらノックをする。
奥からどうぞと聞こえてきたのでドアを開けてから
「ミシェル・バイヤーズ 入室します」
と言いながら入る。
部屋の中には学園長と魔法科主任教諭が待っていた。
「バイヤーズさん、座りなさい」
主任教諭がミシェルに座る様に促す。
ミシェルが座ると、すぐに主任教諭が話始めた。
「あなた、さきほど食堂で魔法を発動させましたね」
ミシェルはゲッという表情をしながら無言になる。
それをみていた主任が溜息をつきながら自分の上着のポケットから魔石をとりだした。
「これは、魔法科の教師に配布されている魔石です。生徒たちの実践は禁止されていますが我々のような一定の魔法師には例外が発令されています。」
魔法をしようしてもいい人もいるんだぁ~とミシェルは感心しながら主任の説明を聞いていた。
「そして、私は魔力の流れを見る事ができるんですよ」
主任は溜息をつきながらミシェルの方を見た。
「貴方が所持している魔石を見せなさい」
ミシェルは渋々主任の言う通りに魔石を見せた。
ローテーブルの上に乗せた紅い魔石をみた学園長と主任は驚く
「…。これは誰から頂いたのですか?ご両親ですか?」
学園長が恐る恐る聞く。多分答えは知っているはずだ。
ミシェルは首をゆっくりと横にふると
「いいえ、魔王様からいただきました」
「......そうですか、だから魔力判定で黒が出たわけですね」
主任は深いため息を付きながら言った。
学園長は
「貴方はこれで違法な魔法を2回行使しました。次、同じような事件を起こすとこの学園を去らなければいけませんよ?」
学園長の言葉にミシェルは反応がないまま下を向いている。
「あなたにとってこの学園はもしかすると意味のなさない場所になり下がっているのかもしれません。しかし、貴族の子女としてはこの学園を卒業してこそ次のステップに行くことができるのです。あなたはそれを理解しているにもかかわらずこの学園を拒否し続けるのですか?」
学園長は席を立つとそっとミシェルのそばまで行き膝の上においてあるミシェルの両手をそっとにぎる
「もし、魔法が復活したらよその国ではぐれの魔法師にでもなるのですか?この国はあなたが思っているよりも保守的です。たとえ、魔王様の後ろ盾があったとしても一貴族としての立場は守れませんよ?」
その言葉に驚き、ミシェルは学園長と目が合う
学園長は微笑みながら
「だから、この学園の卒業は貴族としてはとても意味をなすことをもっと自覚してください。」
学園長は自分の座っているソファーに戻ると
「まぁ~あなたの周囲が少々うるさいのもこちらでは理解しています。そして、」
「黒の魔力を持っているのは魔王のみと言う基本的な知識を与えていない事をこの学園長が代表で謝罪します」
そういうと学園長は深く頭をさげた。
「園長先生…。」
ミシェルは焦っていると
主任も同調して
「そうですよ、さすがにあの発言を聞いた時は私もヒやっとしました。なんなんですか?あの女子生徒は!魔法の常識は世界の非常識なんですか?」
どうやら学園長にミシェルの黒髪と魔力の色を同一視したケイトに対して愚痴を言ったのは主任教諭だったらしい。
学園長は苦笑いをした後、表情を元に戻して
「とはいえ、学内での未許可の魔法の使用は罰則の対象です。そしてこれが二回目」
学園長はミシェルを見ると
「ミシェル・バイヤーズ貴方を2カ月の停学と1カ月のクレアシオン王国への短期留学を命じます」
ミシェルはえ?という表情をする。
学園長はそうだよね~という
「本当のペナルティーは後半の停学2カ月ね。前半の短期留学は、実はクレアシオン王国の第三王子とこちらの第三王子の交換留学なんだけど、セオドア王子があなたを指名してきたのよ。一緒に行きたいと」
「まぁ~婚約者だしいいかなって思って、許可しちゃった。テヘ」
ウインクしながらチロっと舌を出す学園長。
かわいくないですからね…。
「バイヤーズ氏には既に許可を得ています。詳しい日程は後日手紙を送りますので確認してください」
主任教諭も溜息を付きながら話した。上司に苦労しているのかな?
その他、反省文提出や謹慎語の実力テストの実施についての説明を受けるとミシェルは学園長室を後にした。
ミシェルが学園長室を出た後、学園長と主任が目を見合わせる。
「そんな目で見ないでください。」
学園長が主任に訴える。
「彼女の魔法行使は確かに駄目です。王命を逆らっているのですから」
いつの間にか出された紅茶に口を付けると
「でも、彼女が攻撃する相手はいつも魔法の名誉を傷つけた相手か、魔法科の身分の低い相手が囲まれている時です」
シュンとしながら主任は自分が映った紅茶を眺める。
「本来ならそれを止めなければいけないのは魔法科主任と呼ばれている私なのに…。」
情けないです。と眉を下げながら学園長に呟く。
「そうですね…。」
学園長も少し考え込む。以前なら、魔法科の主任教諭と呼ばれれば地位も権力もそれなりにあった。たとえ、自分の爵位が低くとも大丈夫だった。しかし、魔法の地位の低下がその状況を覆してしまった。本来なれば子爵でしかない魔法科の主任が厳しく指導することが難しくなってきたのだった。ミシェルについては、父親から『学生の間は身分は関係ない』と言われているため心置きなく注意しているのだが、かえってその行動がミシェルは本来侯爵家の人間ということを忘れさせているのかもしれない。
「上手くいかないですね」
主任がつぶやくと
「誰か一人でもそれを理解していると言うことが大切なのかもしれませんよ」
学園長はそういうと静かに紅茶を飲んだ。
最後までお読みいただきありがとうございました。