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僕の光は君だけに

作者: 草月叶弥

「だめだよ、逃げないで。

僕だけを、見てて?」


誰もいなくなった大地の上で、涙に濡れた瞳で君が僕を見つめる。

君は僕で、僕は君。

やっと、やっと取り戻せた、君は僕の光……



※※※※※※※※※


「あのね…っもう、会えないの。」


大好きな君との時間はあっという間で、久しぶりに会ったのに話したい事の半分も伝えられなかった事を悔しく思いながら「次はいつ会える?」と聞いた答えに僕は言われた言葉が理解できなくて、君の手をにぎったまま、立ち尽くしていた。

少し前まで笑っていた君が、今は泣いている。

泣き続ける君の瞳から落ちた涙が、カツン…と音をたてて床に転がった。


「だめっ!触っちゃだめ!貴方が燃えてしまう!」


カツン、カツン…と落ち続けるそれを拾おうをした僕を、君は必死で止めてくれる。


「燃える?どういうこと?」


「結晶化した私の涙は、焔の魔石になってるの。

この涙1粒で人は燃え上がって死んでしまう…それでメイドが死んだわ。跡形もなく燃えて、塵となったの。」


床に落ちた君の涙は、透き通っていてそんな力がある様には見えない。


「わたしは…わたしだけがこの涙に触れても何も無かった。

だからわたしは兵器になったわ。

流した涙を戦地に運び、兵器にくくりつけて。

そうして何人も…殺したわ。


貴方にだけは知られたくなかったから必死で隠していたけれど、これ以上は隠し通せないから言うわ。


わたしね、殿下の婚約者になったの。

そして、前線に行くの。

最近会えなかったのはその為に鍛錬をしていたから。

貴方に会うことが許されたのは…新しい涙を流すため。

貴方との別れすら利用されているの。」


どういう事だろう?

君が兵器?

優しくて人が傷つく事が嫌いな君が?

殿下の婚約者?

僕と婚約してたはずなのに?


彼女の言葉を全て否定して、有り得ない!と叫んでしまえればどれだけ楽だろう。

でも、君の流した涙が。今も落ち続ける涙の結晶が、僕の言葉を全て奪ってゆく。


「そう、か。

なら僕は………」


続けた言葉に君はさらに泣いてしまったけれど、僕の心は君だけに。


僕の全てを持って君を守るよ。

どんなに辛いことがあっても。

心や身体が傷ついても。


泣いてもいい、挫けてもいい。

辛くなったら、この手の温もりを思い出して。


僕は僕のやり方で、君を守るために全力を尽くそう。



そして、いつかきっと………………




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