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5.ひたすら可愛い好みの女性


 まどろむような午後、窓から穏やかな光が差し込んでいた。


 応接間を訪ねたリアムは初め、確かに機嫌を損ねていた。――無神経な来客に対し苛立っていたし、この先に待ち受けているであろう数々の問題について考えを巡らせて、頭を痛めていた。


 そんな最悪な気分で扉を開け、前方に視線を向け――窓際に佇んでいる華奢なシルエットに気づく。逆光気味で顔はよく見えないのだが、彼女は緊張しているのか肩を縮こませて、胸の前で指を組み合わせていた。なんとなく、怯えている子猫のようだと思った。


 リアムはすぐに毒気を抜かれていた。数歩足を進めるうちに、自分の顔から険が消えていくのが分かった。


 黙したまま彼女のそばまで歩み寄る。


 一メートルほど距離を置き、対峙した。


 ふわりとした柔らかそうな赤毛。丁寧に淹れた紅茶のような色だ。瞳は淡い緑。鼻は小作りで、瞳はパッチリして、睫毛が綺麗にカールしている。


 年齢は二十歳前後に見えた。いわゆる童顔というやつだろうか。このタイプの顔形をしている者は、十年後もあまり容姿が変化しないかもしれない。――ただ、体のラインは女性らしい艶めかしさがあったので、すごく幼いということもなく、ただひたすら存在自体が可愛らしく感じられた。小動物系というか、内面から滲み出てくる素朴さみたいなものが、彼女の不思議な魅力になっている。


 そんな女性が緊張した様子で、困ったように頬を赤く染めて一心に見上げてくるので、リアムは奇妙な衝動に呑み込まれそうになった。


「リアム・セントクレアです。あなたは……」


 ほとんど上の空で名乗ると、彼女は夢から醒めたように身じろぎして、貴族令嬢らしい礼をとった。


「オリヴィアと申します。あの、これからお世話になります」



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