拝啓 ありがちなテンプレども
ノベルアップ+にも同じ作品を投稿してますが、僅かに手法が異なります(例:作中の主人公の考えが地文にのる等)
黄金の輝きを放つ聖剣。
それに貫かれた者は、その場で糸が切れた人形のように倒れ伏す。
「この人類の敵がぁあああああああああああ!!」
幻想結界者たちは、眼前で聖剣をふりかざす【敵】めがけて殺意の籠められし能力を放つ。
「聖剣……ばっ…とう……」
顔がモヤで隠れた少女が掲げる光は、神話の一振り。
天高く光の柱が昇り、大気が軋む膨大なエネルギーは、その余波だけで少女に降り注ぐ殺意の嵐を振り払う。
使い手の少女は、白髪を赤黒く染めながら、虚ろな瞳で空を仰ぐ。
千導真凛は、その光景をただ、死体が重なる丘の下から、見ていることしか出来なかった。
「……■■…」
真凛は、戦場にて死体の丘に立つ、少女の名を紡ぐ。
いつから、間違えてしまったのだろう。
いつから、彼女は英雄になってしまったのだろう。
あぁ、ご都合主義的な英雄を創り上げたこの糞みたいな世界を。
どうして彼女が、救わないといけないのだろう。
あぁ、今度こそは―――
お前を、英雄にはしない。
———拝啓、ありがちなテンプレども
いつか過去の俺が、この未来を見据えるときが来たのなら―――
うちのアーサー王は、さぞポンコツに育ててやろう。
だれも傷つけられない、世界最弱の王様に。
聖剣は、振り下ろされ、その日、人類は光の中でいとも簡単に、滅んだ。
☩ ☩ ☩ ☩ ☩
目覚ましアラームで目を覚ますと、全身にじっとりと汗をかき、春にもかかわらずシャツは汗で肌に張り付いている。
もう何度同じ夢を見たのだろうか。
顔の見えない少女が、光り輝く剣で、世界を滅ぼしている。
…………。
夢の中の自分の声が頭に反響するのと同時に、吐き気と頭痛が押し寄せた。
これが次の、変えなければならない未来。
洗面台で吐き出したものを、蛇口をひねって流すとともに、顔を洗う。
鏡で顔を確認する。
寝ぐせのついた短い黒髪、顔立ちが、誰かに乗っ取られている様子はない。
「………いつも、過去任せなんだな、未来の俺は」
人生において、幾度となく、未来をみた。その未来は、何もしなければ必ず起こりえた。
それは、実体験として頭に刻まれている。
自身の通う学園の制服に着替え終える頃には頭痛は止まっていた。
俺はこの事象が訪れるまでにまだ時間があることを再認識しながら、ロールパンを咥えて外に出る。