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魔族の子。  作者: フツキ。
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26.予期せぬ存在。

 探索は順調に進んだ。少しずつではあるが、アイテムが反応を示し始めている。やはりここには何かがいる。この辺りは灯りが少ない。灯りが少ないということは、ここは街の外れになるのだろう。よくよく見やってみると、我が辿り着いたのは、以前に「襲撃」で破壊された外壁だった。真新しい石壁が、周囲の古い石壁に馴染まぬまま存在している。

 我は術式に関しては本当に疎いので、その理由は分からないが、石というものは魔力を溜め込む物質らしい。ゆえにこの外壁も、長年、神殿からの結界の魔力を吸って、一層外敵に対し強い抵抗力を持つのだという。なのでついこの間修繕された外壁は、他と比べて防御が薄くなってしまう。

 もしかしたら幽霊とやらは、ここから侵入したのかもしれない。だが肝心の幽霊の姿も気配も感じられない。アイテムに反応はある。もう少しここを探索してみるとするか。だいたいの居場所は掴めたので、我はアイテムを懐に仕舞った。代わりに、周囲を見渡せるくらいの小さな灯りを用意する。いつでも剣を振るえるよう、邪魔にならないマントの襟にそれを付けた。

 何か気配を感じる。酒場帰りの冒険者か、それとも。我はゆっくりとそちらへと向き直る。もちろん、利き手は剣に添えてある。暗闇をじっと見据えると、そこには我の想像もしなかった人物が立っていた。

「何故、お前がいる」

「……ごめんなさい、おじさん」

 そこには外套を纏い、白い息を吐く子供の姿があった。何故子供がここにいるのだ。女主人に留守と面倒を任せておいたはずだ。まさか女主人の目を盗んでここまで辿り着いたというのだろうか。あの女主人がこの子供の気配に気付かぬとは到底思えない。だが、認めたくは無いが、この子供はここにいる。

「それでは寒かろう、早くこちらへ来い」

「うん、ありがとう」

 この子を咎めるのは後だ。寒そうにしている子供を、我の外套の中へ導く。ここにいれば外気よりも温かいだろうし、何より危機が及ぶことも無い。ここまで無事に来られたのが奇跡だと言い様がない。例え街の中であっても、どこにでも危険は潜んでいる。夜だからなおさらだ。

 この子を宿屋に帰そうかとも考えた。だがここから宿屋まではそれなりの距離がある。それを一人で帰らせるのはあまりにも危険だ。だからといって、一度、共に宿屋に戻るわけにもいかない。訪れた好機を逃したくなかった。相手が幽霊であれ何であれ、我のすぐ側にいれば問題無かろう。ちらりと見やれば、我が与えたアイテムを、あの子はきちんと身に着けている。もしかしたらこの道中、無事でいられたのは、これのおかげかもしれない。

「おじさん」

 ふと下から、我を呼ぶ声がした。

「どうした」

「声が聞こえる…」

 我の外套をぎゅっと掴みながら、小さな声で子供がそう続ける。この辺りに人の気配は無い。そういえばこの子供は術式適性があまりにも高かった。我が察知できない何かを、目には見えない何かを、この子は感じ取ったのかもしれない。否、恐らくそうであろう。よほどその声が恐ろしいのか、小さな手は震えていた。

「案ずるな、我の側にいればいい。必ず片付ける」

「それがおじさんの今日の「お仕事」?」

「まあ、そういうことになる」

 実際は違うのだが、ここで違うと説明しても、この子供には理解できないだろう。なので簡潔にそう答えた。

「…声のする方向はどっちだ?」

「あっち」

 そう聞いてみれば、子供は暗闇の先を指差す。やはりその手は震えていた。これ以上、この子を頼ることは出来ないか。その幼い心で見えない恐怖と戦っているのだ、こうなるのも仕方ない。我はもう大丈夫だと告げて、その手を下げてやった。

「絶対に我の側から離れるな」

 再度強くそう言い聞かせると、うん、と子供の微かな声が聞こえた。これは早々に片付けねばならんな。我は子供の指さす方へゆっくりと歩きながら、そう考えた。

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