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魔族の子。  作者: フツキ。
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25.夜の闇へ。

 街が闇に包まれようとしている。夜がやって来たのだ。あれほど騒々しかった商業ギルドは静まり、代わりに酒場が少しずつ活発になる。深夜に魔物狩りに向かう冒険者もいる。夜は聖騎士たちがいっそう注意を向ける時間帯となる。何故ならば夜の闇に紛れて、魔物は闊歩するからだ。それはどの種族も変わらない。よほど強い力を持たぬ限り、溢れんほどの歪みを浴びた「襲撃」でない限り、昼間に活動する魔物はほとんどいない。例外も一応、あるのだが。

 いつも通りの生活を終えて、子供は眠るためにベッドに入った。枕元には一冊の本。いつもそれを読みながら、子供は眠りに落ちていく。それを我が別の部屋から見守るのが、いつの間にか習慣になってしまっていた。そうしているうちに、舟をこぎ始め、ばさりと本がベッドに落ちる音が響いた。眠ってしまったようだ。

 そっと音もなく近付いて、我は本を整えて枕元に置いてやる。今宵も安らかな表情で眠っている。起きてくる気配は無い。そろそろ行動を起こしても良いだろう。

 我は静かにその場を離れ、準備を始めた。といっても、普段の装備に、対心霊用のアイテムを加えるだけだ。心霊の類は物理攻撃をほとんど受け付けない。さらに我は術式に関しては門外漢のため、どうしてもアイテムたちに頼らざるを得ない。

「あら、お出かけですか?この時間帯に出て行くなんて珍しい」

 ロビーのあたりで、そう女主人に声を掛けられる。確かに最近は子供のこともあってか、「仕事」でなければ深夜に宿を出ることはない。最近の「仕事」は遠征か、街の近くで請け負っていることが多いからなおさらだろう。

「ああ。少し調べたいことがあってな、街に出る。子供のことを頼みたい」

「分かりました」

 そう告げると、女主人は我の目的を追及することもなく、ただ頷いて応えた。恐らく思うことはいくらでもあるだろうが、それでも何も言わないでいてくれる、察してくれる心遣いを有難く思う。

 女主人に見送られながら、我は外に出る。日が暮れたからか、いささか寒い。宿屋の近くは酒場も多く、この時間帯でも人の影がちらほらと見られる。酒場も盛り上がっているため、その喧騒を聞きながら、ゆっくりと目的地へ向かう。酒場の灯りが無くなると、途端に街は暗闇に包まれる。ぽつりぽつりと街灯が置かれているが、道を照らすには心許ない。なるべく早く闇に眼を慣らす必要がある。

 はてさて、幽霊と噂されている存在は、どこにいるだろうか。その正体は本当に幽霊なのか。それとも、もっと上位のモノか。「仕事」で何度かそのような対象と戦わねばならなかったときもあったが、肉体を持つ魔物とは一味違うため、いつも上手く要領を掴めずにいた。今回もそうならぬよう、気を付けねばならない。

 とりあえず目星をつけた場所に、我は向かう。それで見つからなければしらみつぶしに行くしかない。そうなると、何度か日にちを分けることになるかもしれない。もし対象が移動する場合、そうなるとますます厄介だ。そうなったら、ギルドに情報を頼らねばならない。ギルドマスターは苦手だが、それでもあのギルドの情報は確かなものだから。


 そのとき、我は気付かなかった。気付けなかった。我を背後から追いかける、小さな姿を。

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