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魔族の子。  作者: フツキ。
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23.街の探索。

「忘れ物は無いか?」

 食事を終え宿屋を出るときに、再度、我は確認するように問い掛ける。この子供が忘れ物をすることは滅多にないが、確認をするのは大事だ。どんな人間であれ、絶対というものは存在しない。それは我も同じことだが。

「だいじょうぶ」

 それに対し、子供がこくりと頷いた。この子が向かう学校も街の中心部にあるので、途中までは共に行くことになった。我らと同じように朝食を終えたらしい街の者たちが、仕事を始めるために、ちらほらと外へ姿を現していた。街が動き出そうとしている。その中には、この子のように学校へ向かう幼い子供の姿もあった。

 今日はいつもより混雑していたからか、女主人や少女の見送りは無かった。誰もいない宿屋の入り口に向かって、子供が小さく行ってきますと呟いた。


 学校へ続く道の途中で、我らは別れた。もしかしたら終わる時間までに帰宅できないかもしれない旨を告げておき、我は街のさらなる中心部へと向かった。このあたりは街の有力者や、重要な施設などが居を構えている。ギルドや宿屋はどちらかというと街の外側にあるため、普段ならばあまり訪れない場所だ。

 我はそこで懐からアイテムを取り出した。手のひらに収まるサイズのもので、歪みを検知すると色が変わるという、冒険者の必需品だ。歪みは鍛錬した者以外には見えない。これが無いと、近くに歪みの吹き溜まりがあると気付かず、命に関わる危険に晒される可能性もある。

 色は変わらない。この石を精製した技術者によって範囲などは変わるが、これはかなり遠い距離まで測れる代物だ。恐らく我の視界内には、歪みは検知されていないということになる。それとも、今は昼だからか、姿を現さないのだろうか。

 我はどうしても、以前に少女が話した噂話が気になっていた。この街は神官たちによって強力な結界が張られており、よほど強い歪みを持ったモノでなければ突破は無理だろう。つまり内部に現れた幽霊らしき存在は、その結界を突破出来るほど強力な歪みを秘めている。そうであれば、このアイテムが必ず反応するはずだ。だが、石の色は変わらない。

 少し場所を変えるか。我はアイテムを懐に仕舞い、ゆっくりと歩き出す。長年傭兵として戦ってきた勘と、長らくこの街に留まっている経験もあって、歪みが溜まりそうな場所の見当はついている。基本的にこのような作業は神殿やギルドが行うものだが、宿屋から得た情報なので、下手に接触をして情報源を探られてしまうのも困る。あの宿屋は特別だ。だから今回は、ギルド等を頼るわけにはいかない。もちろん、情報源の宿屋にも。

「ふむ…」

 あちこちと探りを入れてみたが、石の反応は芳しくなかった。根本的に歪みは陽の光をあまり得意としない。強力な力を得る「襲撃」などでなければ、魔物たちが現れるのは陽が沈み始める頃からだ。やはり時間帯が悪いのか。ならば次は夜に出るとしようか。だがそうなると、子供が寝静まってからの方が動きやすいだろう。下手について来られてしまったら、あの子を守りきれるか分からない。

 あの子供は強い力を秘めている。けれどそれを扱う技術をまだ持ち合わせていない。何より戦わせるにはまだ幼すぎる。そんな子供を巻き込むわけにはいかない。我の本業は傭兵であり、常に死と隣り合わせなのだ。まだ、死ぬわけにはいかないが。

 仕方ない、今回は引き揚げるとしよう。もしかしたら噂話が好きな少女から、新たな情報が得られるかもしれない。時計を見やれば、もう昼の時間になりつつあった。街のあちこちを探っているうちに、こんな時間になっていたようだ。とりあえず、腹を満たすとしよう。そう結論を出した我は、再び根城である宿屋へと戻っていった。

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