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魔族の子。  作者: フツキ。
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17.傭兵の報酬。

 ようやく我の「仕事道具」が返ってきた。どうやら時間をかけた分、かなり丁寧に補修してくれたようで、鎧も剣も、満足いくほどに綺麗になっていた。きちんと術式もかけ直されていたのは有難かった。これで神殿まで行く手間が省ける。普段見慣れているであろう我の姿を見て、子供も自分のことのように喜んでいた。

「おじさん、また「お仕事」に行くの?」

「いや、しばらくは街でやることがある」

 学校へ行く準備をしながら聞かれたので、我は正直にそう答えた。まだ「襲撃」の報酬も受領していないし、何より以前に依頼した情報の件の結果も気になる。後者の件は時間がかかると受付の者が言っていたので、まだ終わってはいないかもしれない。あの青年は信頼出来る仕事をしてくれる。その言葉に間違いは無いだろう。

 途中まで子供を送り届けてから、我はギルドへと足を運ぶ。「襲撃」の件もあってか、ここのところギルドはどの時間も冒険者や傭兵で溢れ返っていた。騒がしいのは苦手なので距離を取っていたのだが、そろそろ向かわねばならないだろう。金に困ってはいないが、報酬の内容は気になる。今回の魔物の量は、普段と比べかなりのものだった。それなりの報酬が用意されているだろう。

「あ、お久しぶりです」

 受付に向かうと、以前に対応した青年がにこりと笑って挨拶をした。

「相変わらず忙しないな、ここは」

「まあ「襲撃」もありましたから。今はそれの後片付けの依頼が殺到してますよ」

 我の発言に対しそう答えながら、青年が座るように勧める。なので有難く我には少しだけ小さい椅子に座らせてもらった。このギルドは様々な依頼を扱う。魔物狩りから探索、収集、変わったものであれば情報提供など多岐に渡る。

「それで、今回は何の御用でしょう?あ、調査の方は一応進んでいるんですが、ちょっと手間取ってまして」

「ほう?」

「欲しい資料が古いものなので、神殿側から許可をもらわないといけなくて」

「そこまで古いものなのか」

「ええ。ざっと三百年くらい、ですかね」

 我の問いに、青年が苦笑しながら続ける。三百年。この街が出来たくらいの時期のものだ。神殿の図書館にはあらゆる資料が眠っているが、さすがにそこまで古いと歴史的資料として厳重に保管される。ゆえに目を通すには神殿からの特別な許可が必要になってしまう。我も「仕事」で何度か行ったことがあるが、確かに許可が下りるまでかなりの時間と手間がかかってしまった。

「すみません、いい報告が出来なくて」

「構わぬ。今日はそれで来たわけではない」

「では、「襲撃」の報酬ですね」

 少々お待ちくださいと付け加えてから、青年は奥の部屋へとそそくさと入っていった。間もなく戻ってきた彼の手には、何枚かの紙があった。カウンターに置かれたそれを、ちらりと見てみる。「襲撃」の期間と規模が大きかった分、報酬もそれなりのようだ。金額にはあまり興味はないが、モンスターから得られるアイテムはとても重要だ。

「今回はアイテムがかなりの量になりましたので、もう既に商業ギルドの方に回してあります。こちらが店舗のリストになります。お手数をおかけして申し訳ありませんが、この書類を見せて傭兵さん自身で交換をお願いします」

「分かった」

「調査が進んだら、宿屋の方に知らせておきますね」

「いつも済まんな」

「いえいえ、これも仕事ですので」

 青年を労いながら席を立つと、ありがとうございましたと返して青年が笑った。調査の方はそこまで期待はしていなかったが、まさか保管庫に手を出さねばならぬほど難航しているとは想像もしていなかった。どうやらこの件は、かなり根深いようだ。我の幼き頃の時代まで遡らなければならない場所。記憶の奥底に仕舞われていたモノ。いや、きっとそれは関係ない。だが、今ならありありとあの光景が思い出せる。

 いや、我らの過去とあの子はまったく関係ない。関係ないはずだ。情報がない以上、そう簡単に決めつけるのは早計過ぎる。何よりあの子供は何も知らない。それならば今まで通りに接していれば良いのだ。親になる覚悟はまだ無いが、あの子供を守るためなら、我はいくらでも己の能力を発揮しよう。情報の結果がどうなろうとも。それが互いのためにもなる。

 まだ学校が終わるには早い時間だ。手持無沙汰になってしまったので、アイテムの交換に向かうとしようか。我はそう考えを切り替える。そろそろ子供のために、魔物除けになるような守護アイテムを渡してやってもいいかもしれない。街の外に出ることはまだ無かろうが、念には念を押しておいた方がいい。そう結論付けて、我はゆっくりと商業ギルドが集まる方向へと向かっていった。

今年の投稿はこれで最後となります。また新年もよろしくお願いいたします。

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