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魔族の子。  作者: フツキ。
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15.5。閑話休題・ギルドマスターとしての役目。

 「襲撃」が終わった。街の一部の城壁が崩れる事態となったが、それ以外の被害は最小限に抑えられた。神官たちの報告によれば、歪みの発生源となった場所は今は落ち着いているとのことだった。「襲撃」によって失ったもの、そして得られたもの、その他様々な報告がどんどんとひっきりなしに届いてくる。ギルドマスターになったことは後悔していないが、さすがの仕事量に、自然とため息が漏れてしまった。

 ギルドに属している者に関しては、そのランク毎に報酬を与えるようになっている。だが問題はギルド外の者で、それなりに名の通った実力のある冒険者や傭兵ならばいのだが、まだ新人だったり、街に一時的に滞在していたゆえに「襲撃」に参加した者に関しては、こちらの裁量が必然的に試される。一応は本人からどれくらいのレベルの持ち主なのか報告があるけれど、それに虚偽が無いとは言い切れない。まあ、ギルドからの退治情報で、ある程度は把握できるのだが。

 今回も旧友である傭兵の活躍は目まぐるしいものだった。「襲撃」の第一波を数人で抑え込み、その後も大型の魔物を何体も退治している。きっとギルドに属していたならば、ギルドマスターに近しい立場を与えられていただろう。だが彼は、それを良しとしなかった。まだ若い頃は共にギルドにいたのだが、傭兵はひとりで戦う方がいいと言って、ギルドから脱退してしまった。

 彼がひとりで戦いたいという考えに異を唱えるつもりはない。彼が孤独を愛するのは、幼少の頃からの付き合いで良く理解している。だがどうしても、極力ひとりであろうとする傭兵を、ギルドマスターは心配していた。恐らくこの街で彼の過去を知る者は、自分と、宿屋の女主人だけだろう。何故ならば自分たちは、まだ物心つかない頃に、女主人に救われたのだから。

 そんな頑なに孤独を愛する彼を変える存在が現れた。小さな小さな、銀髪の少年だった。ギルドマスターはその子供に、どこか既視感を覚えていた。きっと傭兵も分かっているだろうに、それでも、あの子を放っておけなかったのだろう。彼の過去の影響によって。

「新たな報告書です」

 そう考え耽っていると、不意に新しい書類がデスクに置かれた。時計を見やれば想像よりも考え込んでいたようだ。まだまだ書類は残っている。手を止めている場合ではない。

「ありがとう」

 そう言って、届けられた報告書をパラパラとめくる。その中で傭兵が、例の少年を拾ったであろう場所のことを調べて欲しいという報告が混じっていた。そうか、彼も気になっていたのか。そのことに安堵と、一抹の不安が過ぎってしまう。

 あの子は恐らく普通のヒトではない。傭兵はあの才能の高さから魔族だろうと言っていた。ギルドマスター自身も、何度か顔を合わせているので、同族の気配というか、血の繋がりと言うべきものを感じ取ることができる。確かにあの子は魔族に近い。近いけれど、どこか違う感覚もする。

 確かあの子が拾われた所は、人里離れた、モンスターが多くいる場所だと聞いていた。そんなところに何故あんな幼い子供がいたのか。そして何故、傭兵はそれを見つけることができたのか。不思議だと思うところを挙げていけばきりがない。けれど、その不思議がいくらでも存在するのがこの世界だ。この世界には、まだ解明できていない未知がたくさん隠れている。だが今回ばかりは、何らかの繋がりを感じざるを得ないのだ。

 ああ、また考え込んでしまった。とにかく今は仕事に集中しよう。さっき秘書が淹れてくれた冷めたコーヒーを一口飲んでから、ギルドマスターは再び書類と向き合った。

お久しぶりです。また書いたものがだいぶ溜まって来たので、少しだけ更新します。よろしくお願いします。

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