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72話:謎の男

「・・・痛くない。」先ほどまでの打ち付けたひりひりした感覚がなくなっている。リディアはびっくりして目の前の大男を見上げた。おかっぱの髪に赤い薔薇の髪飾りを付け、大きなイヤリングをしている。だが、どう見ても男だ・・・。治癒の魔法は簡単そうに見えて実は結構難度が高い魔術だ。ということはこの人は魔術師なのだろうか・・こんな不思議な人にはあった事がない。

ジークフォルンはニコニコしながら今度はジェラルドの方に目線を置く。「あらぁ・・確かにいい男ねぇ。カルナが気にする訳だわ。」ジークフォルンの遠慮の無い視線にジェラルドは居心地悪そうに眉をしかめながら、それでも口を開いた。

「あんたが、馬車を止めてくれたのか・・?ありがとう、助かった。」

「そうよ〜。っても元はうちの馬鹿息子がしでかした事だから、別に礼なんていらないけどね。」

「馬鹿息子?」

「ええ、あそこでのびて・・・?っち、逃げやがったか。少し殴り足らなかった様ね・・」後ろを振り向いたジークフォルンだったが、そこにはのびているはずのカルナの姿は見えなかった。

「いったいどういう・・・?」理由が分からないと言った様子でジェラルドが問い返す。


「そうねえ・・」といいながら、今度は黙って突っ立ったままのキルケに目を落とすと、おもむろに抱き上げた。キルケが小さく悲鳴を上げた。

「キルケちゃん?!」咄嗟にリディアが手を差し伸べる。

「いや・・・大丈夫だ。なれて・・いるからな。」満足そうなジークフォルンに抱えられたキルケがリディアに向かって声をかけた。どうやら心配してくれているらしい。


「知り合い・・なのか?」ジェラルドがおずおずと聞く。

キルケよりも先に答えたのはジークフォルンだった。「そうよ〜。キルケちゃんとはなっが〜いお付き合いしてるの♪あたくしの一番のお気に入りの子猫ちゃんなんだから〜。」

キルケがぎょっとしたようにジークフォルンを睨みつつ叫ぶ。

「変な言い回しすんな!知り合いっつっても!」とまた、脳裏にミルセディの声が響いた様な気がする・・・。ため息をつくと小さな声で答えた。

「こいつは・・・アステールで商人をやってる奴だ。魔術師ギルド御用達でもあり、手に入れにくい魔道具などの調達に秀でている。」まあ、それだけでは無いが・・と心の中で付け足す。


「商人さん?」リディアが首をかしげる。

「そうだ」キルケが答える。

「で、さっきの馬鹿息子がどうって話は?」ジェラルドが気になっているのかまた尋ねる。

今や、逃げ出した馬を追いかけて行った騎士や、ナタリー、マリアベル達といった旅の仲間全てがジークフォルンの周りに集まって来ていた。

「そうねぇ、積もる話はいっぱいあるんだけど、ここでこうして話している間にも事は進んじゃっているのよ。えっと・・あんたたち、全員で何人いるの?」


「30名余だ。」キルケが短く答える。

「う〜ん・・その人数はさすがに私でもちょっと無理かしらね・・・。とりあえず必要な最低人数は?」

「8名だな・・俺と、ジェラルド、リディア。そこにいる、ジェラルドのお付きの糞にリディアの連れて来たメイド二人、あと、騎士の中で一番腕の良かったやつ二人だ。」そういって顎で指す。キルケに糞と言われたルークはわなわなと震えている。


「まあ、妥当な所ね、あとはゆっくり来てもらう事にしましょう・・」とジークフォルンが呟いた。皆一体何の話をしているのかと唖然としてジークフォルン達を見ている。

「・・ユフテスまで瞬間移動するつもりなのか?」キルケが問う。

「そうよ。キルケちゃん、ちょっと力貸してね♪」そういってキルケにウインクする。その時、脳裏にジークフォルンからの念波が届いた。


=キルケちゃん、その様子だと、私の事思い出してくれた見たいね。うれしいわ〜。でもあまりぐずぐずしてられないのよ。気付いていると思うけど、アルファスが目覚めたわよ。


=ああ・・気付いていた。ずっと聖地の気を貰っていない事もあるが、かなり具合が悪そうだ。今はまだ、半覚醒と言った所だろう?


=ええ、でも色々と厄介な問題があって、明日にでも儀式を執り行うような勢いなのよね・・だから、ちょっと魔力消費しちゃうけど、ここからユフテスに跳ぶ事にするわ。


=明日?!それは本当か?


=そうなの。うちの馬鹿息子も関与しちゃってるから困った事なのよね〜。ともかく詳しい事は後でね。まずはさっさと移転を済ませてしまいましょう。

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