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69話:幼帝1

「イネスタ様・・・戻りましょう?そろそろ風がでてきました。」

「そう・・ですわね」王妃はじっと森の奥に見える塔を暫くの間瞬き一つせず見ていたが、眉を顰め目蓋を伏せると軽く頭を振ってオースティンの先頭に立って歩き始めた。ベランダで待機していた侍女が王妃が来るのを見て静かに扉を開く。

オースティンは最後に城の4隅にある塔と森の奥にある塔に視線を巡らすと彼女の後を追って中に入った。


ユフテスを初め各国は何故竜を欲するのか、それは守護だけでなく、権力の証でもあるからだという。だが昔と今とでは状況も人々の考え方も変わって来ている。今竜が目覚めまた今までと同じくこの国を守護したとしても、今度はその伝説の竜を手に入れるために戦いが起るかもしれない。大人達はそんな事がどうして考えられないのか、思いつかないのかが不思議だった。だが兄上は今この事で隠密裏に動いている。間に合うと良いのだが・・・


明後日には各国の代表を招いての晩餐会が開かれる事となっている。只でさえ厄介なこの時期に他国に気取られでもしたらどうするのだろうか・・。それに、いくら通常よりも多くの人が行き来するとはいえ、この城の警備は最近脆弱になっているような気がする。イネスタ様と別れて、様々な事を思いめぐらしつつ、歩いていると、王付きの従者の一人が慌てた様子で廊下を走っているのが目に留まった。


「どうした・・?何をそんなに慌てている・・・?」オースティンが声をかけた。

「これは、オースティン様・・・。それが今しがたグランディスのイルディアス将軍が皇帝をお連れになって城に参られたのですが・・今しがた王に挨拶を済まされたのですが、たまたま、ルーシェル様がおいでになっていて、それをご覧になったグランディスの皇帝がお年の近いルーシェル様とお遊びになりたいと申せされまして・・今グランディスの一行とクルト様とルーシェル様を第一応接室にお連れした所なのです。何も無いとは思いますが、一応見はりを置き、兵にも一層厳重な警備を王から申し使っておりますので・・・特に地下への警備は・・」


「グランディスの皇帝と将軍が来ているのか・・・?では母上との密通の件について、父上は何か・・・?」


従者は驚いたようにオースティンを見て少し言いにくそうにためらったが、やがて口を開いた。

「いえ・・・、こちらから話を切り出せば、我が国が竜を囲っている事が相手側の知る事になりやぶ蛇です。それにあの手紙については、確かに所々、グランディスと分かるようには書いてありますが、グランディスの名は一言も書かれておらず、物的証拠としては、、確実な証拠とは言えません。もちろん状況的な判断や、元・・第二側妃殿の証言を考えれば、グランディスとの間に取引がなされていた事は確かなのですが、相手側の交渉人の姿が一向に見えて来ないのです。


第二妃の証言によると彼女もグランディスからの使者とは面識がないと、、いつも側妃がいない時に、手紙が届けられたそうで。側妃が引き換えに得た宝石や反物については、王宮に出入りしていた商人らを調べていますが、なかなか尻尾が捕まえられない状況なのです。ですので、ちゃんとした証拠が無いまま、グランディスを槍玉に上げる事はできません。今日の所はお客様として扱っております。」


「なるほど・・・」一瞬オースティンの脳裏に先日であった奇妙な商人の姿が思い出された。

「城に出入りしていた商人の事で、少し思い当たる節がある。私の方でも少し調べてみよう・・・。」


「オースティン様・・・。しかし・・良いのですか?」従者の気遣う様な声に答える。

「ああ。母上の・・・犯した罪をかばう事はできないが、少しでも刑が軽くなるのなら息子の私が頑張る他はないだろう?それと・・・私も母上をたぶらかしたグランディスの輩には少し興味がある。私も会いに行ってみよう。」従者はそれ以上は何も言わず、オースティンに向かって敬礼すると去って行った。


グランディスの者達・・・前帝亡き後幼くして即位した王と、その側近である、魔人とも呼んで恐れられるという獰猛な将軍、もう一人、グランディスには野心家らしいと囁かれる宰相がいるようだが、今回はこちらには来ていないのだろう・・・。

オースティンはそのまま第一応接室へと足を向けた。

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