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49話:グランディス1

ユフテスの王都からさほど離れていない小高い丘の上でグランディスからやって来た皇帝と率いる部下達は移動宿泊用の大きな布で出来たテントの中で過ごしていた。

他の諸国からやって来た使者達も同じようにそれぞれの国ごとに用意されたテントに留まっている。


「余はいつになったら竜に会えるのだ?!」ひと際大きめのテントの中から子供の甲高い声が響いた。小さな子供が大きな玉座の上に座りふくれ面をしている。


「もう少しお待ち下さい、オズベルト様・・・今、手はずを整えているところでございます。もう少しでお望みの竜を手に入れられますとも。」と皇帝の脇に控えているお抱え魔術師のジルベスターが猫なで声で幼帝に語りかける。


少年は膨らました頬を少し戻すと今度は彼の右隣に立つ男に目を向けた。「本当か?もう少しとはどのくらいだ?!余はもう待つのには飽いたぞ?」

「さようでございますか・・・。それでは竜が手に入るまでの間、何か余興でもご用意致しましょう。おい、あれを持ってこい。」


「は」


しばらくすると兵が二人掛かりで大きな箱を抱えて持ってきた。「開け」との命令でその箱が開かれる。その中に入っていたのは大陸でもその数を著しく減少され保護されている稀少動物、フィクサーの子供だった。銀色の大きめの猫の様な体に長い尻尾、そして額の真ん中には角が生えている。このフィクサーの角には大きな魔力が宿ると言われ、大陸中で乱獲され、今では数える程しか存在しない幻の獣だった。


「陛下、これはジルベスターが陛下の御為にと捕獲せしめた幻の獣、フィクサーでございます。この獣、多少気が荒いところもありますが、陛下の言う事を聞くようにしつけがなされております故、竜が手に入るまでの間、どうかこれでお心をお慰め下さいます様・・・」


幼い皇帝は玉座から身を乗り出すと興味深そうに檻の中に入った獣を見つめた。

「なるほど、これがフィクサーか、初めて見たぞ?近寄っても噛まれぬのか?」興奮して幼帝が問う。

「大丈夫でございます。どうぞお近寄り下さい。」皇帝は玉座から降りるとそろそろと、フィクサーのいる檻に近づいた。気配に気がついたのか、フィクサーが顔をむっくりと上げてその宝石の様な深紅の瞳で皇帝を見る。そして威嚇するようにグルルルルと唸り声を上げた。

伸ばしかけた手をびくっと幼帝が引っ込めると同時にフィクサーの体に電撃の様なものが走った。苦しそうにフィクサーが身を震わしその場に倒れ込む。

「な、なんだ、いったい!」幼帝が声を上げる。

もう一人オズベルトの脇に控えていた魔術師が杖をフィクサーに向けたまま、幼帝に申し開きする。「申し訳ございません。陛下に向かって唸り声を上げるなど、私のしつけが至らぬ証拠、どうぞお気になさらぬ様、すぐにでも陛下のお側に侍らすようしつけしなおします故お待ち下さい。」


オズベルトは軽く頷いて言った。「う、うむ・・そうか。わかった。では代わりに何か珍しい食べ物でも用意しろ、余は腹が減った!」そしてゆっくりと玉座に戻り座るとつまらなさそうに横たわった獣を一瞥した。

すぐに皇帝のための食事が用意される中、皇帝の右に立っていた男の元に兵が一人近寄ってきて、その耳元に何かを囁く。男は頷くと幼帝に向かい声をかけた。


「陛下・・・所用が出来ました故、御前を暫くの間、退出させていただきたく存じます」


「何だ・・、お前も余を置いて行くのか・・イルディアス」

「すぐに戻って参ります故・・・」

「ふん・・わかった。許す。」イルディアスはオズベルトに一礼すると幕屋をでていった。

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