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閑話:ルーク少年のご主人様観察日記4

「ああ、それは今日殿下がお出かけになっている時にペイリュード侯爵からジェラルド様にお渡しするようにと言われた物ですが・・・いったい中身は何なのですか?」そういって僕はジェラルド様の手元を覗き込んだ。

「あれ・・・これは・・」そこにあったのは一枚の肖像画と手紙らしきものがついている。この方は確か・・・隣国の王女であらせられるリディアーナ姫?国は違えど、リディアーナ姫の美しさは諸国に知られている。それに、リディアーナ姫は、エストラーダの国王同士仲が良いので、幾度かこの国を訪問されている。町中でもリディアーナ姫を模写した姿絵は飛ぶ様な売れ行きだと聞く。

僕は殿下の顔色を伺いながらおずおずと尋ねる。「あの、殿下、これってもしかしなくてもお見合い用のものですよね・・ジェラルド様、リディアーナ王女とお見合いなさるんですか?」


「・・・・あいつは何と言ってた?」

「はい?」

「だからっ!ペイリュードは何と言っていたかと聞いてるんだ。」僕はびっくりして殿下の顔を見つめる。何をあんなに怒っていらっしゃるのか、訳が分からない。


「え、えっと、ペイリュード候はそれを殿下にお渡しするようにと・・えっと・・それから、あ!これを見れば殿下もお喜びになるとか何とか・・・・」


「ほう・・・そう言ったのか・・あいつが?」なんだか黒いオーラが染み出している様な・・・。僕の本能が危険信号を告げている。「あの・・殿下?」

「あの野郎・・・いったいどういうつもりだ」殿下はリディアーナ王女の額縁を握り締めている。リディアーナ王女とのお見合いが何か問題があるのだろうか・・。

「あの、殿下・・恐れながら、メイドが軽食を持ってきております。お食べになりませんか?」お腹がすいていると何かと苛立つものだ。僕はメイドが持ってきたトレイをジェラルド様に差し出した。


殿下は僕のほうをご覧になると、ちょっと顔を赤くして謝られた。「すまん、ルーク。お前には関係ない事だったな。ありがとう、それを食べたら風呂に浸かろう。お前も一緒にどうだ?」

殿下がお謝りになられるなんて・・・。僕はちょっと感動してそして言った。「滅相もございません。ジェラルド様、ゆっくりとくつろがれて下さい。」

僕はテーブルに置かれた肖像画を片付けると替わりに軽食の入ったトレイから料理を出して並べる。軽く焙った肉を挟んだサンドウィッチに、果物、ホロホロ鳥の卵の蒸し煮に新鮮なオレンジの絞り汁などだ。

殿下は座ってそれをお食べになると、湯殿へと向かわれた。僕も着替えを用意して一緒について行く。王族の体を洗う為の侍女達はすでに待っているはずだ。


殿下の後をついて歩きながら僕は考える。殿下はもう18歳になられる。そろそろ婚約者候補の一人や二人いてもおかしくはない年だ。時期国王のパトリック殿下などは、もう17歳の時にはパンディッタの姫君とご婚約されていたはず。あのお美しい姫君に何かご不満でもあるのだろうか・・。確か姫君と殿下は幼馴染みだと聞いていたが・・。もやもやとしたものを抱えつつ、湯殿についた。


殿下が服をお脱ぎになられると引き締まった見事な体躯が現れた・・・いいな。僕もあんな風になりたい。湯船の外で控えている侍女達も殿下の裸に見惚れているようだった。

殿下はゆっくりと湯船に浸かられると僕のほうを振り向いて仰られた。

「この匂い・・・カモミールだな。お前がやったのか、ルーク?」

「は、はい。お疲れのご様子だったので、リラックス効果のある香油を混ぜてあります。」

「そうか、、ありがとう。世話をかける・・。」そういって殿下は目を瞑られた。ほんのりと赤く染まった頬はとても色っぽく、僕までドキドキしてくる。


湯殿を出られると、また侍女が幾人かで殿下の体をお拭きになる。こういった一連の作業は昔から王家に伝わるものであり、一貴族の僕などは人前で裸になるなど、恥ずかしいが、殿下は気にもなさらない様子だ。きっと他の王族もそうなのだろう。僕は侍女達と一緒に殿下の着替えを手伝った。


着替えが終わる頃、殿下が一人の侍女を呼び寄せた。何かをこそっと耳打ちすると彼女の頬は赤く染まった。そしてお辞儀をして出て行く。まさか夜伽に呼ばれたのだろうか・・?最近はメイド長に小言を言われていた為か、城のメイド達には手をつけていなかったようだが・・。

「あの、殿下・・・今のは?」遠慮がちに尋ねる。

「ん・・、ああ、気にするな、なんてことはない。」・・・いえ、殿下、それはまったく答えになっていません・・・。怒るメイド長の顔を思い浮かべて僕は盛大にため息をついた。

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