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42話:蜘蛛の糸1

ユフテスには続々と諸国から贈り物を携えた使者が到着していた。

王宮の窓からその様子を見ている子供達がはしゃいだ声を上げている。「見て、おにいちゃま!あそこ、すごく人がいっぱいだよ。」


「ん、どれ?」今年15歳になるカイル王子の異母兄弟、オースティンは妹が指差す方に目を向ける。あれは・・・大国グランディスの旗だ。オースティンは秀麗な顔を少し曇らせた。

「ルーシェル、そんなに身を乗り出しては危ないよ!」ともう一人の男の子が妹を止めた。淡い茶色の髪と焦げ茶の瞳をもつ活発そうな少年だ。


オースティンは二人の兄妹に目を向けると言った。「クルト、ルーシャル、僕はちょっと兄上にお会いしてくる。お前達は先に部屋に戻っておいで。」

「え〜〜」「兄様、ずるい!」二人はむくれてオースティンに抗議の姿勢を取ったが、オースティンは取り合わず、笑いながら、二人を送り出した。さて・・と。オースティンはもう一度さっとグランディスの一団に目を向けると眉をひそめた。他の国と比べても格段に人数が多い。いくら第一王位継承権を持つ兄上の儀式に参加するとて、あれほどの人数を送り込んでくるのは理解しがたい。オースティンは身を翻すとカイル王子の執務室へと足を早めた。


兄上が帰ってこられてから2週間、この城は異様に活気づいていた。母親が違うとは言え、兄上は私たち弟妹を疎む事もなく、可愛がって下さってきた。僕らは皆、兄上を敬愛している。ユフテス王の側室である母上は兄上よりも僕を王位継承者にと、やかましく言っているが僕にはそんなつもりは毛頭ない。誰が見てもこの国の時期国王は兄上が相応しい。


兄上は戻られてから何か、すごく焦ったように政務に取りかかっておられた。ただでさえ、成人の儀を控えて忙しいと言うのに、夜もあまり寝ていらっしゃらないご様子だった。オースティンは己の拳を強く握りしめた。いつもなら、決して弱音を吐いたりしない兄上が、あの日、僕を呼んで仰られた。

「オースティン・・久しぶりだ。元気にやっていたか?」

「はい!兄上もお元気そうで何よりです。リザルでの勉強は如何でしたか?僕も兄上の成人の儀を終えたら、リザルに留学する事になります。僕も兄上に恥をかかせぬ様、しっかりと勉学に努めます。」

「そうか、お前もリザルに・・。良い事だ。お前もきっとあそこで良き友を見つけられるだろう。期待しているよ。」そういって僕に微笑まれた。


「友・・ですか?そうですね、楽しみです!ところで、兄上、今日はいったいどのようなご用件でしょうか?急用だと聞いておりますが・・・」


「ああ、そうだ。オースティン、お前に頼みたい事がある。これは内密に調べて欲しいのだが・・。」兄上は僕に大国グランディスの事を告げられた。どうやら、グランディスの間者がこの城内にいるらしく、色々と漏れるはずのない情報が相手側に筒抜けになっていると言うのだ。僕は兄上から話を聞かされた時、すぐに頭に思い浮かべた人物があった。

それは・・・母上だ。母は元々グランディスの大貴族からユフテス王家に嫁いでいる。ユフテス側としても、大国の貴族と繋がる事は、あまり資源のないこの国にとって付加価値が大きいと踏んでいたのだろう。母上は何不自由ないグランディスの大貴族の娘として我が侭に育ち、ユフテスに嫁いでからも、高慢な気性や権力に固執する執念を保ち続けていた。


兄上は静かに僕に仰られた。「考えたくはないが、もしかしたらこれはお前にとって辛い思いをさせる事になるかもしれない・・。だが、この件を任せられるのはオースティン、お前しかいないと思っている。ーー引き受けてくれるか?」


「・・分かりました。兄上、お任せ下さい。必ずやこのオースティン、グランディスの間者を見つけ、証拠を握りましょう。」もし、それが、身内の仕業だったとしても・・・。できれば、そうでない事を祈りたい・・我が母親がそれほど愚かでない事を願う。

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兄上の執務室の前まで来ると僕は扉をノックした。扉が開かれ、入れ違い様に魔術師長が真剣な顔つきのまま出て行った。何かあったのだろうか・・?

「兄上、オースティンです。失礼致します。」そう言って僕は中に入った。


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