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34話:始動

「キルケ、キルケ・・・?!」ジェラルドの訝しがる声にはっとして顔を上げる。

「すまん・・・、ちょっと考え事をしていた。」俺としたことが、つい昔の感傷にふけってしまっていた。

「構わないが・・大丈夫か?正直この本には俺も驚いた・・お前もそうだったんだろう、キルケ?」ジェラルドが感慨深く呟いた。

「ああそうだな。確かに、この魔術の構成とセンスは普通の人間の範疇を超えている・・・。あえて聞かせてもらいたいのだが、どうするつもりなんだ、お前達は?お前達は今までもずっとユフテスの内情を調べてきたのだろう?そしてこの月末に開かれる王子の誕生日に合わせて様々な事柄が動いてきている。お前達の狙いは何だ?ジェラルド、お前も、ただ単に、王子の祝いに駆けつけるだけではないのだろう?そこの女、いやリディアも・・」


リディアはキルケの問いにはっと身を固くした。私の願いは、あの囚われている塔の住人を救い出す事、でもジェラルドやキルケは・・・?正直、この日記を読んで事の重大さに戸惑っていた。ただ彼を助け出すだけでは根本的な解決にはならない事は承知していた。そこに差し込んだ一筋の光、彼の考え出した魔術式は、うまくいけば贄を殺す事なく、地下で眠りについている竜を救う事ができる。一石二鳥だ。だが、リディアとて王家の子女として、魔術の知識はそれなりにもっている。だが、これは並大抵の術者では到底成し遂げる事は難しい・・・


キルケならどうだろうか・・・リディアはそっとキルケの顔に目を向ける。姿形はこの上なく愛らしいこの少女をジェラルドは稀に見る魔術師だと絶賛していた。彼女になら、この術を試行する事は可能なのだろうか・・・いや、でも・・・私の我が侭で関係のない二人を巻き込む訳にはいかない。と、その時、ジェラルドの落ち着いた声がリディアの耳に心地よく入ってきた。


「ーー俺は、もともとある理由があって、ユフテスの事を調べていた。まさかこんな重大な事になるとは最初は思ってなかったがな・・。だが、きっとカイルもこの事を知った上で何らかの事をなそうとしているのは確かだ。直接言われた訳ではないが、あいつが成そうとしている事の手伝いはしてやりたいと思っている・・・親友として。だが、これははっきり言って魔術の腕はさっぱりの俺の手には余る出来事だ。キルケ、お前の目からみてどうなんだ?この術式は?これは、可能なのか・・?」


キルケはジェラルドの問いには答えず、今度はリディアに向かって問いかけた。

「あんたは・・?」


「わたくし・・・の願いはずっと、あの塔に囚われている方を自由にしてあげる事でした。その思いは今でも変わっていません・・。」そしてリディアはかいつまんで塔の住人との出会いから今までの事をキルケに話した。


「ふん・・・なるほど、それでね・・。あんたにはあんたの事情があるみたいだね。じゃあ、お前達は事情は違えど、目的はそいつを塔から救い出し、そいつの持つ魔力の核を使い竜を転生させる・・そういうことか?」


暫く考えてジェラルドが相づちを打つ。「そうだな、可能であればそれが一番望ましい。」

「あの・・キルケちゃんこれは、可能なのかな・・?この術が使えるぐらいの優秀な魔術師、たぶんユフテスにも存在しないと思う・・・。でももしこれが可能ならジェラルドが言った通りこれ以上の策はないよね・・。」


「・・・失敗したらどうするつもりだ?大人しく竜に贄を差し出し喰わせるのか?それとも・・竜を殺すのか?」


キルケの言葉に二人はうっと息を飲んだ・・・。失敗したら、そうだ、失敗したらどうする?こんな複雑で難しい術を成功させる方が確立は低い。しかも今からだと、優秀な術師を探す事は不可能に近い。


リディアがキルケに問いかける。「キルケちゃん・・・なら何とか出来る・・・?」都合の良い考えだが、それでも優秀な魔術師なら可能かもしれない、一縷の望みをリディアはキルケに投げかけた。

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