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15話:始まりの1日目

ーーナタリーはリディアーナの部屋の前に立つと、一呼吸おいて扉をノックする。「リディアーナ様、只今戻りました。」

扉を開くと丁度マリアベルがリディアの着替えを手伝っている所だった。リディアはにこやかに振り向きながら労いの言葉を掛けた。

「お帰りなさい、ナタリー。朝早くからご苦労様。あの馬鹿王子から返事は聞いてきてもらえたかしら?」

「は、はい! ジェラルド王子は姫様の夕食会にご出席なさると・・。」

「そう、ありがとう。あら・・?、ナタリー、あなた顔が赤いわよ?風邪でも引いたのではなくて?」ナタリーの顔を横目で見つつリディアが問いかけた。

先ほどのジェラルド王子とのやり取りを思い出して、ナタリーは一瞬でトマトのように赤くなる。「いえ、、あの、大丈夫です。姫様にご心配かけまして申し訳ありません。」真っ赤な顔でうつむくナタリーを多少不思議に思ったが、肩をすくめるとそれ以上は追求しなかった。


「よろしいですわ、リディアーナ様。」マリアベルがリディアの支度を終えて言った。今日のリディアは朝摘みのピンクのローズを編み込まれた髪に挿し、同じく薄いピンクのレースが重なりあったドレスを清楚に着こなしていた。


「ありがとう、マリアベル。ところで今日の予定はどうなっていたかしら?」


「今日は午前中は、政務についてのお勉強の為、宰相のレオル様がいらっしゃいます。昼食後は、2時からオディフィノール家のアディール様主催のお茶会に招かれておられましたわね・・それから、その後はリュート(楽器)のお稽古。そうそう、あと、細工師の者がユフテスのカイル王子に献上する品の事で姫様とお話したいと申しておりましたが、どう致しましょう?」


「そうね、もうあまり日にちが無いものね。いくら熟練の手練といえどもあれだけの品を作るのは時間が掛かる筈、いいわ、夕食の前に会うと伝えておいて頂戴?」


「承知致しました。」短く礼をすると、マリアベルはナタリーを引き連れて部屋をでていった。


とかく、王女の身であってもアステールを継ぐ唯一の後継者、リディアの毎日は忙しいの一言につきる。生まれ落ちた頃より一流の教育を受け、幾ら同世代の子供達より大人びているといっても、まだリディアはまだ16歳の少女だ。


ーーー現在でも、たまに目を離すとふらっと雲隠れするお転婆で、心優しい、お人好しの可愛いリディアーナ様・・。


恐れ多い事だがマリアベルにとっては、幼い頃より我が子のように慈しんできた姫、そして誰よりも幸せになって欲しいと願っている。


到底普通なら16歳の少女が経験することのない重責をリディアは背負っている。民の上に立つ者として周りから普通である事を許されない、普通以上の物を期待され続ける彼女を、支えてくれる誰かが必要だとマリアベルは常々考えていた。

彼女が幼い頃であった塔の君にかける思いは痛い程分かっているが、大切な姫を他国の曰く付きの名前を失った王子になど関わらせたくはなかった。そう、大切な姫だからこそ、、。


王がしてきたように、マリアベルも何度もリディアに言い聞かせようとした。「姫様、リディアーナ様、、お願いですからお聞き分け下さい。あの者の事はお忘れ下さい・・。」と。だが、リディアーナ姫は決して彼を諦める事をしなかった。大人になって行く過程の中で様々な知識や教養を見に付け、自分の願いがどれほど困難かを理解した上でも・・・。


そしていつしかマリアベル自身も彼女の強い意思に折れた。それが、リディアーナ様の望みであれば、、それほどまでに強くお求めになるのであれば、私は貴方のために尽くしましょう。ーー


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