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1-37 ティアナ、屋外の世界を知る

 ドアを開けると、一面に見慣れた光景が広がる。

 しかしその光景もティアナにとっては新鮮だったのか、その美しい相貌を驚きの色に染めた。


「これが……日本」


「ここら辺はどちらかと言うと田舎だからね。もう少し町の中心の方に行ったらもっと驚くと思うよ」


「ふふっ、それは楽しみね」


 そう言って目を輝かせるティアナを連れ、僕たちはゆっくりと人通りの多い方へと歩いていく。


 その間、老若男女様々な人とすれ違ったのだが、そのほとんどが吸い寄せられるようにこちらへと視線を向けてくる。


 しかしそれも当然か。


 なぜならばしっかりと睡眠を取り、さらに輝きを増したティアナの美しさは、世界トップレベルのアイドルやモデルと比較しても圧倒してしまうほどに、飛び抜けたものなのだから。


「ティアナ、大丈夫?」


 彼女に町の中心の景色を見せてあげたいというその一心で歩いていたが、当然近づけば近づくほど人の数は増し、こちらへ向く視線も多くなる。


 その視線の多さに、僕は彼女の身を案じ眉を落とす。対して彼女はさっぱりとした笑顔を浮かべた。


「えぇ、たしかに視線は多いけど、欲望の渦巻くねっとりした視線よりも、さっぱりとした、純粋な好意や好奇心の視線が多いからかしら。嫌な気分にはならないわ」


「なら良かったよ」


「逆に茨は大丈夫かしら?」


 言ってティアナはからかうような視線を向けてくる。


「何が?」


「わかっているでしょ?」


 得意げに言うティアナ。そんな彼女へチラと視線を向けた後、僕はなんとも言えない笑みを浮かべる。


「僕へ向けられている無数の殺意のこと?」


「ふふっ、よくわかってるじゃない」


 そう言う今も、四方から男たちの憎々しげな視線が向けられている。まぁ、それも仕方がないといえるだろう。


 僕みたいな中肉中背の一般男子が、ティアナのような圧倒的美少女と並んで歩いているのだ。誰だってそうなるし、きっと僕も向こう側にいたら同じく血の涙を流していたはずだ。


 だからその視線自体は当然のものだとわかるため、まったく気にはならない。


 ただ、その感情に身を任せてこちらへ突っかかってくる存在がいるのであれば話は別であるが。


 そんな僕の考えを読んだのか、ティアナがこちらへ視線を向け微笑む。


「……安心して。確かに鋭い視線は多いけど、仄暗い視線は無い。茨を直接害するような存在はいないわ」


「なら、良かったよ」


 言って微笑み返すと、ここで僕の腕の中から、


「ワフッ!」


 という鳴き声が聞こえてくる。まるで、私を忘れるな! とでも言うかのように吠えるモフ子に、ティアナは明らかにデレデレとしながら口を開く。


「もちろん、忘れてませんよ。モフ子様への視線はすべてが明るいものですね」


「ワフッ!」


 ティアナの言葉を受け、自慢げに吠えるモフ子。

 その姿を見てか、周囲から「かわいい」という声がたくさん聞こえてくる。


 と、そう周囲の様々な視線や声に晒されながら歩くこと十数分。僕たちはこの町一番の大通りへと到着した。

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