王様のさがしもの
昔々ある小さな国に小さな王様がいました。
王様の名前はローランド。
まだ10歳になったばかりです。
お城の中は大人ばかり。
子供はローランドの他には誰もいません。
ご飯を食べるのも、勉強をするのも、お風呂に入るのも、いつも1人。
他の大人達はローランドを見守ってはくれるけれども
一緒に遊んだり、競ったりすることはありません。
もちろん、王様であるローランドと冗談を言って笑いあう事などないのです。
なので、ローランドはいつも退屈していて、友達がいればいいのになと思っていました。
そんなある日、不思議な夢を見ました。
夢の中でローランドは同じ年頃の子供達と混ざって遊んでいました。
乗馬をしたり、狩りをしたり、詩を朗読したり。
疲れたら皆で木陰に入り、お肉と野菜がいっぱい入ったサンドイッチを食べました。
笑ったり、悔しがったり、おしゃべりしながら寝っ転がったり。
それは、ローランドが今まで経験したことの無いほど楽しい時間でした。
こんな時間が続けばいいのにと思ったので、朝目が覚めたときローランドはがっかりしてしまいました。
「ローランド様、どうされたのですか?」
心配した家来が話しかけてきますが、ローランドは夢の中の話を誰にも言いませんでした。
誰かに言ってしまうと、もう二度とあの幸せな夢が見れないような気がしたからです。
その日は一日中日向ぼっこをしながら、本を読んだり猫のトトを膝に乗せて撫でたりして過ごしましたが時間が経つのがとっても遅く感じます。
(早く夜になればいいのに)
ローランドは一日中そのことばかり考えていました。
そして夜になると、ローランドはいつもより早くベッドへ行き眠りにつきました。
早くあの幸せな夢を見たかったからです。
その晩、また夢で友達になった子達と遊ぶ事ができローランドは安心しました。
しかし、夢の中で子供達からお別れを言われてしまいました。
「もう僕たちは君に会えない。もし僕たちに会いたくなったらいっぱい勉強を頑張って。そして立派な王様になってね。そうしたらまた会えるよ。」
そしてローランドは立派な王様になる事を約束してお別れをしました。
次の日目が覚めると、ローランドはすぐに大臣の所に飛んでいきました。
大臣は今まで勉強の先生や大臣から逃げてしまうことも多かったローランドが、自らやってきた事にとても驚きます。
「王様!どうされたのですか?」
「今日から僕は立派な王様になる!」
やる気に満ち溢れた王様に大臣はビックリしながらも、とても喜んで応援してくれる事になりました。
それから王様はまた皆に再会するために毎日毎日、勉強に剣の稽古に頑張りました。
そして大人になった王様は国中の皆から慕われるとても立派な王様になりました。
しかし夢の中の友達には会えませんでした。
まだ立派な王様じゃないから会えないのか、王様は肩を落としながら何となくゆっくり周りを見渡しました。
すると、そこには今まで王様を支えてくれる大臣や騎士やメイド達が目に入りました。
(彼等とはいつからの付き合いであっただろうか)
皆いつも熱心にに王様に仕えてくれていました。
小さな頃は友達が欲しくて夢にまで見たけれど、ずっと自分を支えてくれている彼等の存在はなんと尊いものなのか王様はハッと気が付きました。
「私が気付いていなかっただけか。」
王様はフフフっと笑うと、これからも皆のために、民のためにこの身を尽くそうと決めたのでした。