1-3 学園の休日
「おい、おきろ。」
オウガが起こす。そういえば遊びに行くんだった。
「ごめんごめん。」
「もう二人とも部屋の外で待ってんぞ。」
そういうことは先に言ってほしい。
「オッケー。すぐ支度する。」
手早く支度を済ませ部屋を出るとアイザが、
「遅いぞー。」
「ごめんって。ところで今何時?」
「何時って朝の五時だけど。」
はや!学校より早い。こんな時間からこいつら何してんの⁉
「そういえばどこ行くか決めてなかったわね。」
そうだ、まだ何も決めていなかった。
「そこは安心しろ。大体決めてある。学園の敷地内の喫茶店に行くぞ!」
「もしかしてあのライムライムに行くの?」
「そうだ!」
「やったー!あそこ行ってみたかったんだぁ。」
「それってどこにあるの?」
「ヒロト、お前ライムライムも知らねぇのかよ。」
「逆にオウガは知ってたんだ。喫茶店とか行かなそうなのに。」
「ほんとよ、いつも興味ないとか言ってたのに。」
「ど、どぉーでもいいだろそんなこと!とにかく行こうぜ!」
「そうだオウガの言う通りだ。早くいかないと一日に入店できる人数に制限があるから入れなくなっちまう!行くぞ!」
その掛け声と同時にアイザとライラを先頭にみんなで走り出す。
…
……
「フゥー。間に合ってよかったね!」
「今日一組目っていうのは予想外だったけどな。」
いやいやこの時間に開いてることに驚け。しかも店主もいないし。
「この時間に開いてたんだね。」
試しに言ってみる。
「確かにそうだな。」
「あれっ?ライムライムの開店時間は朝七時って書いてあるわよ。」
「そういえば来るときに行列あったけど。」
「「「「まさか、あそこがライムライム⁉」」」」
「でもここ看板にライムライムって書いてなかったか?」
「もう一回見てくる!」
そういって俺は店を出た。看板を見た。思わず吹き出してしまった。看板にはこう書いてあったのだ。
【純喫茶 ライチライチ】
早速みんなに伝える。
「「「純喫茶 ライチライチ⁉」」」
「嘘⁉」
「なんでこっち来たんだ?」
「いやお前が連れてきたんだろ!」
「でもライラ何も言わなかったぞ!」
「途中まで同じ道だったから気がつかなかっったのよ!」
三人が言い争ってる間に奥から男性がやってきた。
「あのぅ。」
どうやら店主らしい。
「だからアイザが!」
「オウガに!」
「ライラを!」
「「「#$%&!¥?%$&!?」」」
「あのっ!」
「「「何っ⁉」」」
「ひっ!申し訳ありませんがあちらはもう満席ですので、こちらで我慢していただけませんか?」
「「「すいません。」」」
「じゃあこれをお願いします。」
「俺もこれを。」
「「俺も!」」
みんなでとりあえずコーヒーを頼んだ。
「ありがとうございます。ではごゆっくり。」
「なんか申し訳ないわね。」
「「だな。」」
いやお前らね、一番気まずいのは俺だから!こいつらマジ疲れる。
「お待たせしました。」
早速飲んでみる。
「「「「⁉」」」」
こ、これは…
「「「「おいしい!」」」」
「ありがとうございます。一応この店もP学ができた時からありますので。」
「この前友達にライムライムのコーヒー貰ったけどこんなにおいしくなかった。」
「「俺ももらったけどこれよりおいしくなかったぜ。」」
みんな気入ったようだ。確かにこれはおいしい。
「今度からここに来ましょう!いつもすいてるし、ライムライムより安くておいしいし。」
「ありがとうございます。今日客が来なかったら店をたたもうと思っていたんです。では、ごゆっくり。」
「おいしいわね!そういえばみんなは何属性だったの?」
「俺は水だったよ。」
「俺は炎だったぜ。」
「へぇー、私は雷だったわ!アイザは?」
「俺は秘密だ!」
「そ、そうなのね。」
どうやら秘密なことは気にしないらしい。そんなようなことをひたすらしゃべっていると店主が、
「そろそろ閉店の時間なんですけどぉ。」
「えっ⁉まだ正午ですよ!」
どうやらこちらの世界でも十二時を正午というらしい。
「そうなんですけど、お昼休憩もかねてこの時間には一度閉めるんですよ。次は十五時から十九時までの営業になりますので。」
「わかったわ、じゃあまたきますね。皆、次どこ行く?」
「文具店行きたいな。」
俺は言った。こっちの世界の文具をまだ持っていないからだ。
「いいぞ。」
「わたしもなんかみたい物あったきがする。」
「俺もペンケースほしい。」
「じゃあ決まりね!文具店といえばMOMOKOKOね!早速行きましょう!」
出口から出た。次の瞬間、
ドン!
何かにぶつかられ、後ろに倒されてしまった。
「ヒロト、大丈夫か⁉」
「てめぇなにしやがる!」
「おっと、ごめんごめん。あまりにもバカっぽくて見えなかったよぉ。おや?これはこれは、転校生の普通君に、魔法の使えないと噂のアイザに、不良のオウガとそのいとこじゃありませんかぁ。」
目の前には、細い(目も)金持ちっぽい男子(今しゃべった方)と、その隣にいる大きな岩のような男子がいた。岩のようなほうは、学年が上にも見えるが、制服の線の色が同じなので、同じ学年だ。その二人組とみんながにらみ合っていた。
「大体あんたたち誰よ。」
「俺はぁ、ダルエン財閥の御曹司、マイネ様だ。」
「俺様は、将来大魔法使いになる、ガイ・ギガン様だ!」
するとライラが小声で、
「【大魔法使い】じゃなくて【大魔導士】だっつうの。そんな奴がなれねぇっつうの。」
だいぶ切れてる。
「てかこいつは普通だけど普通君じゃねぇ!ヒロトだ!ついでに俺、魔法使えるわ!」
フォローが地味に傷つく。
「なら見せてもらおうかなぁ、大魔法祭で。」
「「「「なにそれ?」」」」
「これだからバカどもは困るぜ!」
お前に言われたくない気がする。
「大魔法祭は、二人一組で戦うトーナメント形式の大会のことだよぉ。それに君らが出て、二組のうちどちらかが俺に勝てばいいだけだよぉ。まぁ、一回戦すら突破できないだろうけどねぇ。」
こいつ腹立つ。てかトーナメントの概念もあるのか。
「ビビったのかぁ?」
「いや、お前らみたいなキモい奴とデカバカにビビるほどのヘタレじゃないよ。」
「てか私たち急いでるからもう行くわね。ヒロト、立てそう?」
「あ、うん。」
急いで立ち上がる。
「じゃあついてきて!」
「おい!お前ら!どこ行くんだよ!まだ話は終わってねぇぞ!」
「ああいうのは無視するのに限るわね。」
その通り。アイザとオウガが奴らと喧嘩始めなくてよかった。
「着いたわ!ここがMOMOKOKOよ!」
名前のわりにシンプルな外装だった。中に入ると、これまたシンプルで普通だった。
「ここは割とシンプルなデザインの文具が多くて、大体三百ピンで買えるのよ。」
金の単位は「ピン」らしい。一昨日この世界に来た時のカバンの中に、プロホのほかに、金が入っていた気がする。今はポッケトに入れていたはずだ。手を入れてみると、結構入っていた。
「お前そんな大金どこで!」
「かばんに入ってたよ。」
「これなら一式そろえられるわ!よかったじゃない!」
「ちょっと貸してくんね?」
「オウガ、人の金借りるなって言ったでしょ。」
いつも言われているらしい。
…
……
とりあえず一式買った。
「今日はもう帰りましょうか。」
「うん、変な奴に絡まれて疲れたし。」
「じゃあ俺も帰る。」
「俺は爺ちゃんとこよってく。」
アイザを残して帰ることになった。爺ちゃんってまさか学園長?そんなわけないか。
「アイザの爺ちゃんってどんな奴だろうな?」
「意外と普通かもよ?」
「でも普通では絶対ないアイザのおじいちゃんなら普通じゃない気がするわね。」
そんなことを言っていると部屋の前についた。
「また明日学園でね!」
「また明日。」
そういって部屋に入った。
「じゃ寝るから明日起こしてくれ。」
ぐがぁーー
毎回思うけどオウガは寝るのが早い。しかし俺も疲れているので、布団に入るとすぐに寝てしまった。