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拝啓、終末の僕らへ  作者: 仁乃 戀
第四章
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犯した過ち

 「…………違う」


 無意識に否定の言葉が口から溢れる。


 「僕の……明梨に対する気持ちは……っ、嘘なんかじゃないんだ…………」

 「……なんで、まだ否定するわけ……?」


 そんな僕に呆れたとでもいうように明梨は言葉を遮る。


 「優の気持ちは何回も聞かせてもらった。 でも、優の心は私に寄り添ってはない。 そうじゃないの……?」

 「そんなはずはーーーーっ!」


 容赦無く口撃をしてくる彼女。

 その眼から涙が零れているのを見て、僕は唇を噛み締め、俯く。

 その様子を見た明梨は僕を見逃してはくれなかった。


 「本当は…………。 本当は分かってるんでしょ、優自身、心の底から私を求めているんじゃなかった。 周りの言葉に踊らされて……一時の胸の昂ぶりに身を任せた結果……」

 

 静かに、しかし力強く、彼女の言葉が僕を刺す。

 刺された場所からは血が溢れ、僕は血塗れになってゆく。


 「僕は…………確かにそうだ。 そうだよ。 元から分かってたさ、明梨と付き合うのなんか僕には不釣り合いだなんて。 …………それでも、明梨は僕に寄り添ってくれた。 心を赦してくれた……」


 本当はこんな話をするつもりじゃなかったのに、なんでこんな話をしているのだろうとふと思う。

 明梨にこんな顔をさせたかったわけじゃない。

 今頃僕らは隣り合って笑ってたんじゃなかったのか。


 僕が悪かった。

 なら何が?

 玲と夜に会ったこと?

 シャッチーの言葉を否定しなかったこと?


 全部ハズレだ。

 正解は劣等感を心の底に隠し持っていたこと。

 いつか抱いた1つの感情は、地道に領土を広げて僕の心に深く、太い根を張った。

 もう引きちぎることも不可能なくらいに。


 突如僕の中には怒りという感情が湧いてきて、無意識に言葉に感情を乗せてしまう。


 「だからこそだ! 僕は明梨のその気持ちに応えたかった! 僕はこんな奴だとわかっていても寄り添ってくれた明梨に嫌な思いをさせたくない、でも僕にたいそうな事は出来ないから……だから、僕は明梨への気持ちをただ叫ぶしかないんだよ!!」

 「……そうやって! そうやって自分を正当化しないで! 自分はこんな奴だから……? これくらいしかできないから……? そんなもの、私は1つも求めてない!! そうやって自分を低く見て! 自分はできないって決めつけて! それでも私のためにしているって言って、まるで自分は悪くないかのようにわかりやすく振る舞ってるだけ!! 私は……っ」


 止めどなく流れる感情をさらけ出し、最後に言った。


 「私は…………純粋に私を好きでいてくれる、そのままの優が好きだったの……」


 漂うことなく掻き消されそうなほど弱々しく舞った言葉は、皮肉にも僕の耳にはしっかりと届いた。

 透き通るような声。

 しかし僕のことを通り抜けることなく、深く深く心に突き刺さる。


 しばし沈黙が流れる。

 気付けばさっき大声で言い合っていたことで周囲の視線を集めてしまったようだ。


 「……行こう」


 その視線に気付いたのか、明梨が先に席を立つ。

 僕も同じように席を立って明梨についていく。

 ぴんと張っていた糸が切れたように店内には再び落ち着いた雰囲気が流れ、またそれが僕の心に強く響く。




 もう、終わりなのか。


 結局僕は変わっていなかった。

 明梨や、玲に出会って僕はもう別人のように生まれ変わったとばかり思っていた。

 でも、それは僕の勘違いだったんだ。


 僕は何もしていない。

 漫然と結果だけ見て、自分が満足していただけだった。

 僕は……変われないのか。


 明梨の斜め後ろをただ歩く。

 僕らの間に会話はなく、ただただ俯いて歩くだけ。


 駅の前に来てようやく明梨が振り返ると、明梨は驚きに目を見開いた。

 それはきっと僕が酷い顔をしていたからだろう。

 僕が悪いのに、涙を流して目を腫らし、情けない顔を彼女に見せている。

 最後まで残念な奴だとつくづく思う。


 そして、


 「もう……終わり。 私は2人のことを特別だと思ってた。 ……私も自分勝手だね。 本当に釣り合わないのは私の方かもしれない。 …………じゃあね」


 やけに優しい口調で、終わりを告げられた。


 思わず膝から崩れ落ちるように地面に伏す。

 これ以上は、聞いていられない。

 …………何もかも、終わりだ。


 明梨が踵を返して改札に向かっていくのが見える。

 声くらいかけれるだろ、動け。

 そう念じても、足は地面と一体化したかのように全く動かない。


 ここでも自分の意志の弱さを痛感してしまった。

 僕が嘆くように顔を上げ、明梨が改札を通り抜けた瞬間、耳を突き破るような声が響く。


 「違う!!!!」


 背中の方から発せられた声が聞こえた瞬間。



 世界が、止まった。

いつも読んでくださりありがとうございます!


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