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拝啓、終末の僕らへ  作者: 仁乃 戀
第一章
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クラス分け

 『では、これにて入学式を閉式いたします』


 なんとかやり切った。

 大きく息を吐いて力を抜く。

 壇上でスピーチするとき、ガチガチに固まっていた僕の緊張を解してくれたのは間違いなく彼女だ。

 何故だか、彼女が声に出さずに『大丈夫』と声をかけてくれたおかげで、激しく打つ鼓動は簡単に収まって、言葉に詰まることもなく終えることができた。

 ……不思議なこともあるんだな。


 さて、この後は校舎に移動してクラス発表だ。


 「友潟君、おつかれさま。 スピーチ、良かったよ!」


 ホールから出ようとしている僕に上坂さんが声をかけてきた。


 「い、いや。 上坂さんのスピーチの方が僕のより断然上手だったよ。 実際、上坂さんのおかげで僕のスピーチがうまくいったっていうのもあるし」

 「そんな、謙遜する必要なんてないよ? あの先生も言ってたじゃん。 『学校生活の始まりにふさわしいスピーチだな』って!」

 「あの人は大袈裟なんだよ」


 入学式の緊張感から解放されて、彼女も気が少し楽になったようだ。


 「友潟君、一緒に校舎に向かおう?」

 「僕でいいの?」

 「最初に知り合ったのが友潟君だから、他に行く人もいないの。 いいでしょ?」


 彼女から嬉しい誘いがあったから、ここは乗っておくことにする。

 上坂さんが敬語を使わなくなったことは、あえて触れないでおいた。


 「おい、あれって」

 「秀才2人組じゃん。 改めて見ると上坂さんめっちゃ可愛くね?」

 「それに対して男の方はなぁ……」


 彼女と2人で行動するのは少し恥ずかしいな、とは思ったが、まさかここまでになるとは思ってなかった。

 さっきの入学式で壇上に立ってスピーチをしていたから、良くも悪くも他の生徒には自分たちの存在はよく知られている。

 特に彼女はその容姿から、既に男子からの人気を集めているようだった。

 隣を歩く俺とはやはり正反対だ。


 「ね、ねえ、上坂さん」

 「なに?」

 「僕と一緒に行って良かったの?」

 「どういう意味?」


 彼女は首を傾げて聞く。

 その仕草までもかわいいと思えてしまうのだから、そりゃ人気も出るだろう。


 「あえて隠さずに言うけど、上坂さんはかわいいから、かなり男子から人気があると思うんだ。 だから、僕なんかと行かないでも、他に友達はたくさん作れると思うんだけど」

 「えっ」


 彼女は僕が予想外のことを言うから動揺したのだろう。

 小さく驚きの声を漏らして頬を少し赤らめる。

 僕はというと、周りの人から注目されていることもあって、爆発してしまうんじゃないかというくらい顔が熱かった。

 少しの沈黙があった後、彼女はクスッと小さく笑って言う。


 「私は友潟君がどういう考えで隠さずに言ったのかはわからないけど、なんか、()()()()()()()()()()。 友潟君は、ちょっと特別な気がして」


 彼女の言葉にとどめを刺される。

 きっと今頃僕の顔は真っ赤になっているだろうから、彼女に悟られないよう下を向いて歩く。


 「上坂さんがそう言うなら、それでいいか」と彼女に聞こえないように呟いて、校舎に入っていく。


 なんとか落ち着きを取り戻し、雑談をしながら入り口から少し進んだところにある、掲示板のところにやってきた。

 掲示板の一面に大きく貼り出された紙には、A組からO組までの計15クラスに分けられ、担任と生徒の名前がぎっしり書かれている。

 入試の成績が優秀だった生徒は、成績が普通だった生徒に混ざってM・N・O組の3クラスのうちどれかに振り分けられる。

 人混みをかき分け、見えやすい位置まで来て自分の名前を探す。


 僕はM組だ。

 隣では上坂さんが必死で自分の名前を探している。

 なんとなく知っている名前が載っていないか探していると、隣に書いてあるL組のところに【与那嶺】の字を見つける。

 与那嶺さん、もとい、玲は隣のクラスなのか。

 同じクラスだったら、女子で苦手なタイプとはいえ、知り合いが1人増えたのに。

 そんな複雑な感情を抱いていると、隣にいた彼女が嬉しそうに声をかけてきた。


 「友潟君。 同じクラスだね。 よろしく!」


 どうやら彼女も僕と同じくM組らしい。

 神様は、僕がリア充になることを望んでいるのだろうか。

 なんとなく浮かんだことを引き出しにしまって、僕らはM組の教室に向かうことにする。

いつも読んでくださりありがとうございます!

面白いと思っていただけたら、是非ブックマークや評価をしたり、感想を送ってくださるとすごく嬉しいです!


また、アルファポリスにて恋愛小説大賞に参加中です!

良かったらそちらもよろしくお願いします!


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