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拝啓、終末の僕らへ  作者: 仁乃 戀
第二章
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対抗心

 「え? じゃなくて。 ほら、口開ける」

 「あ、明梨? 今自分が何をしようとしてるかわかってます?」

 「ん? 優に食べさせようとしてる」

 「いやいや……」


 僕が奢ったから代わりに何かしてあげようと思ったのか、明梨はかなり大胆な行動に出た。

 っていうか、こんな手段に出るってことはもしかしたら明梨も……?

 いや、そんなわけないか。


 こうして考えている間にも、彼女はずっと僕が食べるのを待っている。

 だが……。


 「言いたいことは沢山あるんだけど、とりあえず一つだけツッコませてくれ。 焼き小籠包、そのまま食べたら十中八九僕の舌が焼けるぞ」

 「まぁ確かにね。 ……でも、今日優はちょ~っとだけ、調子が良いみたいだし、大丈夫かなぁ~って思って?」


 わざとそうしてるのかはわからないが、途中から人が変わったような低い声だったから少し恐怖を覚えて身構えてしまう。

 そんな僕の態度を見て、


 「あはは、冗談だよぉ。 そうだね、火傷して欲しくないし……よっと」


 そう言って、頂上に小さく切れ目を入れる。

 すると、肉汁がじわじわと溢れ出す。

 『お~』と、感嘆のような声を漏らして再びこちらを見る。


 「じゃあ、はい! これなら大丈夫なはず」

 「ん? え? 本気か?」

 「うん、本気だよ?」


 安易に本気とか言わない方がいいぞ、勘違いしちゃうから。

 それにしても、明梨は本当に僕に食べさせたいようだ。


 「まじか……」


 ……やるタイミング間違ってないか?

 友達同士で普通こんなことするか?

 などと考えながら小声で唸るが、明梨は全く気にしている素振りを見せない。


 ここまできたら、俺だけが無駄に意識しちゃってるみたいで逆に恥ずかしくなってきた。

 そう考えると多少気楽だ。


 「わかったわかった。 食うよ」

 「よろしい。 はい、あ~ん」

 「あ~……」


 ぱくっ。


 ……流れでやってしまった。

 まだ熱いが、そんなことを気にしていられるような状況じゃない。

 食べてから、突然これまでにない恥ずかしさが込み上げてきた。


 「……っ、やっちゃったぁぁ…………」


 隣を見ると、何故か僕よりもずっと恥ずかしそうにしている明梨がいた。

 手の隙間からは、真っ赤になっている顔が覗く。

 それなのに、どこか笑顔で楽しそうな明梨を見て、僕に少し魔が刺した。


 「じゃあ、今度は明梨ね」


 明梨がやったのと同じように、頂上を少しだけ割いて顔を覆っている明梨の口元に運んでいく。


 「ふぇ?」


 僕が何をしているか気付いた明梨は、一瞬僕の顔を見て目を丸くしていた。

 きっと僕もすごく顔が赤くなっていることだろう。

 だが、やられてばっかりじゃいられない。

 そんな小さな対抗心から、僕はこのような行動をとっている。


 「…………もう、知らない!」


 がぶ。


 数瞬躊躇った後、豪快に小籠包にかぶりついた。

 勢いよくいったから、汁が少し飛んでしまっている。


 「~~!! はふ、はふ」


 声にならない叫びをあげて、口元を抑えて足をじたばたさせている。

 多分、相当熱かったのだろう。

 こんなにすぐ食べると思ってなかったから、僕こそ心の準備が出来ていなかったものの、こうして見ると恥ずかしさは意外と感じない。

 そんなことより、明梨の反応がちょっと面白くて、そっちに気が行ってしまう。


 なんだ、この小動物。

 さっきはばたばたと騒々しかったと思えば、今度は顔を真っ赤にして静かになった。

 何も言わないし、どうしたのだろう。


 「……ほい」


 彼女の食べた小籠包の残り半分をまた箸で口元に持っていってやる。

 彼女は顔を赤くしたまま動かない。

 ……流石に調子に乗り過ぎたか?


 そう思っていると、


 ぱくっ、もぐもぐ。


 何も言わずに突然食べた。

 ……可愛過ぎだろ、これ…………。


 「……ん」


 そう言って、彼女は小籠包をまた僕に差し出してきた。


 「い、いや、もう良くない?」

 「だめ。 優だって散々やったんだから。 ここで逃げるのは許しません」


 最初にやってきたのは明梨の方なんだが……。

 客観的に見たら、恥ずかしすぎて死にそうになってきたので少しだけ距離を取ろうとしたが、彼女にがっちり腕を掴まれる。

 彼女は恥ずかしくないのだろうか。


 「ほら、あ~ん。 ……おいしい?」

 「……うまい」


 僕も多少は慣れてきたが、ちょくちょく刺さる視線が痛い。

 なぜ学校でもないのにこんなに人から見られないといけないのだろうか……。

 付き合ってるならまだしも、至って普通の親友なのに。

 まあ、こんなことしてる時点で普通じゃないか。


 僕はこの後のスケジュールを頭の中で何度も何度も確認する作業に入って、痛い視線と恥ずかしさからなんとか目を逸らそうとするのだった。

いつも読んでくださりありがとうございます!

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