天使の降臨
「えっ……ちょ、突然どうしたんですか?」
「見たらわかりますよ」
「???」
冷静を装って声を出すが、心の中では焦りと喜びが混ざり合っていた。
彼女は特に意識していないのかもしれないが、僕にとっては大事件だ。
まさか、入学式初日からこんなことになるとは思っていなかった。
……後で彼女の連絡先を聞いておこうか、席も隣だし。
彼女に手を引かれて入口まで行くと、そこには自分が見逃していたであろうボードが目に入った。
「これです! 1番上に優さんの名前と席番が書いてあります。 私の名前と席番がその下に書いてあって、たまたま私の席にあなたが座っていたんです!」
そう言われて1番上に目を向けると、実際にそう書いてあった。
僕は入学式の段階で運良く美少女の隣の席を引き当てたみたいだ。
この調子でクラス分けもいい人たちがたくさんいるクラスが引ければ最高だ。
ひとまず間違えて彼女の席に座ってしまっていたことを謝ろう。
「そうだったんですか、ボードを見ずに勝手に座ってしまってすいません」
すると、彼女は「お気になさらず」と微笑む。
やばい。
この人、天使だ。
そんなことを考えてぼーっとしていると、
「まだ、名前を聞いただけで自己紹介してませんでしたね。 私は上坂明梨です。 これから3年間、よろしくお願いします」
「もう知ってるとは思いますが、友潟優です。 こちらこそよろしくお願いします」
軽く自己紹介を済ませ、もう1度ボードを見る。
ボードには10人の名前と席番が書かれていて、何を表しているのかわからない。
彼女なら何か知っているのだろうか。
「なんで僕ら10人だけ、席が決められてるんでしょうね」
「何ででしょうね? 私もわからないです」
そりゃそうか。
まあ、いずれ分かるだろう。
「とりあえず、席に戻りましょうか」
優しい微笑みを僕にプレゼントして、彼女は席に戻る。
僕も1度席に戻ることにするが、冷静になって考えると、今自分が置かれている状況が夢みたいだ。
もはやそれも通り越して、恐ろしいとまで言える。
上坂さんはきっと中学でもスクールカーストのトップに君臨し、その美貌から数多の男子から注目されていたのだろう。
僕は俗に言うコミュ障というものは拗らせていないため、人と会話すること自体は問題ないが、流石に異性となると会話するのも難しくなってくる。
そもそも友達が少ないのだから、コミュ障を拗らせていないだけマシだろう。
にしても……少なくとも入学式の間は彼女の隣にいることになるのか。
いや、実際のところ、リア充になりたいだの彼女欲しいだの考えていた身としてはこれ以上に美味しいシチュエーションはない。
今のうちに彼女と仲良くなっていけば、スクールカーストとかを考えてもかなり良い立ち位置につけると思う。
しかし、僕がそんな位置に本当につけるかと聞かれればかなり厳しいと思う。
努力はするが、コミュ障ではないとはいえ明らかに陽キャラである上坂さんと会話するのは、ハードルが高い。
どうにかさっきの会話の間は抑えたが、内心では緊張しまくっていた。
どっちみち、僕の理想の青春を送るためには避けられない関門のようだ。
……こうして僕の今後の生活への不安が地道に積み重ねられていくのだった。
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