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拝啓、終末の僕らへ  作者: 仁乃 戀
第二章
33/79

班決め

 「それじゃあ、今日中に全部決めないといけないから、パパッと決めちゃってくれよー」


 月曜日、1時間目のホームルームでは、玲の言ってた通り宿泊行事の班やアクティビティ決めを行うようだった。

 澤谷先生は教室の端っこに椅子を置いて、本を読んでいる。

 普段はこんな放任主義ではないが、宿泊行事を作るのは生徒自身だ、という考えがあるようで、澤谷先生は基本的に話し合いに介入してこない。

 先生が座ったと同時に、宿泊行事の実行委員となった女子が前に立った。

 名前は……なんだっけ?

 まあ今は気にしなくていいか……。


 「今日は、宿泊行事の2日目に行う農村体験と、3日目に行うアクティビティの班決めをします。 農村体験は、5・6人のグループをクラス内で作ってもらい、現地の農家の方の家にお邪魔して、色々と手伝いをしに行ってもらいます」


 彼女の説明がひとまず終わると、クラス内がざわつき出した。


 「え、農家にお邪魔するって本当?」

 「まさか民宿ってわけではないだろうな……」

 「農村体験って、やる必要あるのかよ……」


 出てくるのは愚痴ばかりだ。

 それもそうだろう。

 宿泊行事といっても、あくまで学びの過程で導入しているとのことなので、これも一種の学びだ。

 好んでこういうことをする人はそうそういないだろう。


 前に立っている委員の彼女は、やれやれといったように小さく首を振ってから、説明を続ける。


 「3日目ですが、皆さんにはそれぞれ自分のやりたいアクティビティを選んでもらいます。 クラスごとではないので、他クラスと一緒に行動します」


 すると食い気味に話を聞いていたクラスの女子が、耐えきれなくなったのか質問を投げかける。


 「あのあの! アクティビティって何があるんですか?」

 「えーっと…………アクティビティは、全部で6種類ですかね。 ハイキング、カヤック、サイクリング、森林探索、アクセサリー作り、ボート作りがあります。 これから資料と投票用紙を配布するので、それをよく見て書いてください」


 話が終わるとまたクラス内がざわつき出す。

 案の定、アクティビティに関しては良い印象を持っているようだった。


 「ねえねえ、一緒にボート作り行かない?? ちょっと楽しそうに思ったんだよね~!」

 「んー、私は森林探索も結構良いと思うよ? ハンモックで寝るのとか絶対気持ちいいと思うし」


 「なあなあ、サイクリングかハイキング、どっちか選んで競争しねぇ?」

 「望むところだ。 サッカー部の脚力なめんなよ?」

 「あ、間違ってもサイクリングで競争したりとか、ハイキングでどちらが速く登れるか競おうだなんて考えないで下さいね。 最悪、生活指導の先生と一緒に回ることになるので」

 「……やめとくか」

 「ああ……」


 回ってきた資料を見る限り、人気が出るのはやはりカヤックとサイクリングあたりだろうか。

 明梨に目線を送る。

 すぐに気付いた明梨は、こくっと頷き、手で丸を作った。

 僕も頷き、迷うことなくカヤックに丸をつける。


 「それは放課後までに提出してくださいね。 それで、農村体験の班決めなんですが…………どうしょぅ……」

 「くじ引きでもいいんじゃない?」


 ここで澤谷先生が口を挟む。

 こういう困ったときはちゃんと意見を出してくれるところが、生徒から人気なのだろう。


 「じゃ、代わって」


 小声で彼女に声をかけ、先生が前に立つ。


 「はーい、ここから、農村体験の班を決めるくじ引きを行いまーす。 基本的に男女比は1:1ね。 じゃあ、出席番号順に引きにきて、名前を黒板に書いたら、席に戻って。 黒板の前で話してると詰まっちゃうから、書いたらすぐに座るように」


 そして、女子の方からくじを引いていく。

 くじ引きって言葉に謎の力があるのかは知らないが、大体くじ引きとなると盛り上がる。

 男女混合だからなおさらだ。

 特にこのクラスには学校全体で圧倒的な人気を誇る明梨がいる。

 男子が盛り上がるのも無理はない。

 僕自身、彼女と一緒でなければどうしようかと考えると、冷や汗が出てくる。


 もうすぐ僕の番だ。

 明梨は3班。

 僕の前にも7・8人引いているが、奇跡的に3班は誰も引いていない。

 さっきから断末魔が聞こえるくらいだ。

 3班を引ける確率は多少なりとも高くなっているはずだ。

 絶対に引いてやる……そう思って席を立ち、先生のもとに歩いていく。

 すると、先生が一瞬、にやりと笑ったように見えた。

 気のせいだろうか?


 くじを引こうとすると、先生が突然箱を振った。

 タイミングが悪いな、そう思ってくじを引き直し、おそるおそる番号を見る。

 3。

 奇跡か……?

 思わず小さくガッツポーズをしてしまう。

 なるべくこの気持ちがみんなに悟られないように、チョークを手にし、3班のところに名前を書いた。

 突如、歓声というべきか、悲鳴というべきかわからない声が上がった。

 席に戻り、いつものように顔を伏せて寝る態勢に入る。


 僕の顔はきっと真っ赤になっていただろう。

 クラスの他の男子に乗せられているだけなのかもしれないし、他に仲が良いクラスの女子がいないからかもしれない。

 理由は僕もわからないが。

 ただ一つ言えるのは。

 彼女と班が一緒になれただけで、今までで一番とも言えるほどの幸せを僕は感じた。

いつも読んでくださりありがとうございます!

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