対話の始まり
「いらっしゃいませー!」
店員の元気な声が聞こえる。
店内を見回すと、週末の昼ということもあってか、かなり混んでいるようだった。
入って左側の2人席がちょうど空いているのを見つけて、明梨と2人で座る。
「優、先に買ってきて良いよ。 席、見てるから」
「そっか。 わかった」
彼女にそう促されて僕は席を立つ。
冒険はあまりしたくないので、前回と同じコーヒーを頼む。
注文して待っている間に彼女の方を見ると、どこかそわそわしているように見えた。
それもそうか。
本屋を出てからも気まずい雰囲気は拭えないままだ。
そわそわする気持ちもわかる。
コーヒーを受け取って、席に戻る。
スマホをいじっていた明梨が顔を上げ、入れ替わりで明梨が飲み物を買いに行く。
僕は、これからどうしたらいいのだろう。
最初は、もう明梨や玲と縁を切ろうと思っていた。
これ以上一緒にいたところで、僕と彼女たちの住む世界が同じになるということはないだろう。
しかし、彼女のさっきの言葉が引っかかる。
本音を言い合って何がしたいのだろう。
本当に彼女たちは僕と仲良くしたいのだろうか?
だとしたら、本当に物好きだと思う。
1人で思案していると、明梨が帰ってきた。
彼女は無言で席に座る。
僕らの周りでは、どこか眠たくなるような音楽と雑談の声が聞こえる。
このまま黙っていても時間の無駄だ。
何から話そうか。
「そういえば、玲はどうしたのかな?」
ふと思い出して明梨に問いかける。
すると彼女は難しそうな顔をして答えた。
「そう、私も気になってた。 さっきから何故か玲に連絡がつかないんだよね……」
「僕の方からもさっきメッセージを送ったけど、反応はないね。 体調崩したりとかしたんじゃないかな?」
「それだけならまだいいけど……」
ふと、頭の中で朝見たニュースが再び流れる。
……いやいや、そんな訳はない。
彼女はすごく心配しているみたいだが、神隠しにあったなんてことを信じる必要はないだろう。
「もしかして、朝のニュースのこと?」
「うん……大丈夫かな、玲……」
この前会ったばかりなのに、もうそんなに仲良くなったのだろうか。
彼女の考えていることが読めない。
「ところでさ…………優は、優自身をどう思ってるの?」
様子を窺っていると、よりわけのわからないことを聞いてきた。
「それって……どういう意味?」
「そのまんまの意味だよ。 簡単に言い換えるなら、『優は自分のことが好きか嫌いか』っていうことを私は聞いてるの」
そんなことを知って何になるんだ、などと考えつつも僕は答える。
「僕は……自分のことが嫌いだよ。 好きになれる所なんて、1つもないんじゃないかな」
苦笑混じりの僕の言葉に、彼女はなんて返すかな、などと考えていると。
「……やっぱり」
彼女の態度が変わった。
いつも読んでくださりありがとうございます!
面白いと思っていただけたら、是非ブックマークや評価をしたり、感想を送ってくださるとすごく嬉しいです!
また、アルファポリスにて恋愛小説大賞に参加中です!
良かったらそちらもよろしくお願いします!




