ステータス
「入学からもうすぐ1週間だけど、クラスはどんな感じ?」
カフェの席につき、玲が口を開く。
僕らが来ているカフェは全国的に有名なチェーン店で、他の人は顔面偏差値高めだったり、お洒落な雰囲気を醸し出していたりして僕は圧倒されていた。
そんな僕を尻目に明梨が応じる。
「まだぎこちない感じもするけど、みんな仲が良くて楽しいと思うよ。 優はどう?」
「え、僕? 僕は、まだ全然馴染めてないかな……」
実際に僕は入学早々に陰キャラの立場を獲得した。
入学式にあんなに張り切っていたのに、情けない。
ここで嘘をついても仕方がないので、自嘲するように簡潔に答えた。
「えー。 そうなの? 私はてっきり、明梨と優の2人がクラスの中心になってるのかと思ってたよ」
「玲、それは何を根拠に言っているんだ」
「え、私たちと話しているときの優の雰囲気的にそうかなーって」
こいつは何を言っているんだ。
さっきは冗談で言ってるように聞こえたから、とりあえずノリで返したが、本気でそう思っているみたいに玲は言ってきた。
横から明梨が入ってくる。
「私も、玲が言ってることはわかる気がする。 実際、優は成績トップで入ってきてるから、声がかけづらいんじゃないかな? みんな、優から話しかけてくるのを待ってると思うよ」
それも確かに一理あるが、それに関しては明梨も同じような状況だったはずだ。
明梨は第一印象が良かったから、たいして苦労はしなかったはずだが、僕は声をかけるので精一杯だった。
それなのに、この2人は。
本気でそう思ってるみたいに言っている。
「君らは苦労しないだろうけど、僕にはちょっと厳しいかな」
本当はこのとき、かなりイライラしていた。
理由は僕自身わからないが、多分、この2人が根拠もないことを言って友達の少ない僕を慰めようとしているのだろう。
建前では、な。
本当は、たまたま会っただけで、誘わないのは可哀想だからとりあえず誘って、いじって楽しんでいるんじゃないか。
ああ、一旦考えだすとキリがない。
「私たちだって苦労してるよ? でも、その分友達といる時間は楽しいんだよね。 だから、優ももっと教室で話そうよ。 疲れて寝るのもわかるけど、たまにはクラスでも会話しよう?」
明梨は諭すように言ってきた。
僕の中で何かが切れた。
思ってもなかったことが、突然僕の口から溢れ出してきた。
「もう言うなよ! どうせ陰キャラだとかぼっちだとか内心思ってるんだろ。 ……君らとは住む世界が違うんだ。 僕と君らでは人間としてのステータスに差がありすぎるんだよ!」
そう言って、さっき買ってきて冷め切っていないコーヒーを飲み干し、スクールバッグを掴んで入り口まで早足で歩いていく。
結局僕はこうなるんだ。
そういう運命なんだ。
「優!?」「どうしてそんなに怒るの? 待ってよ!」
2人が驚いて僕に声をかける。
いらない。
いらない……。
ドアに手をかけて一瞬手を止めたが、怒りを止めることができなかった。
2人を置いて僕は店を出た。
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