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拝啓、終末の僕らへ  作者: 仁乃 戀
第一章
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自分なりの優しさ

 プシュー。

 電車のドアが開き、ぞろぞろと人が降りていく。

 人の流れに身を任せ、自分も外に出る。

 本格的に今日から授業が始まる。

 それは大事な1ヶ月のスタートラインにようやく立った感覚だった。

 今日は、色々な人とも話してみようかな。


 「友潟くーん!」

 

 そんなことを考えていると、後ろから名前を呼ばれる。

 声の主は上坂さんだ。

 

 「おはよう。 上坂さんも結構早い時間から学校に行くんだね」

 「私、時間に余裕を持って行動したいタイプなんだよね~」

 「僕と同じだ」


 ホームルームの25分前には教室に着く予定で家を出ているので、同じ高校の生徒はまだ周りにほとんどいない。

 部活が始まったら、朝練などで早く来る人もいるだろうから、この時期にしか見られない光景だ。

 

 「そういえば上坂さん、もう入る部活は決めた? 僕は、まだ迷ってるんだけど……」

 「んー、私は運動部で頑張るっていうよりかは、ゆる~く活動していきたいんだよね。 趣味のことも考えると、料理部が妥当かなー」

 「ほんとに料理好きなんだね……」

 「大好きだよ? 大変だなって思うこともあるけど、美味しい料理ができたときの喜びを知っちゃったら、もう抜け出せなくなっちゃった。 こんどお弁当作ってきてあげよっか?」

 「なんてことを言うんだよ」


 会ってからまだ1日しか経っていないのに、もう冗談を飛ばしてくる彼女に少し驚いたが、僕は笑って受け流す。

 彼女は自然と振る舞っているのだろうが、僕からしたらこういうのは新鮮だ。

 いつか友達と笑ってくだらない話をしていたい、とふと思った。

 だから、これも必要なことなんじゃないか?


 「あ、ごめん、ちょっと先行ってて」


 そう言って僕は足を止める。


 「どうしたの?」

 「ご飯買ってくるの忘れたから、さっき通ったコンビニで買ってくるよ」

 「食堂で買って食べたら?」

 「あそこの雰囲気あんまり好きじゃない」

 「じゃあ私も行く!」

 「時間ないから、ほら、先行ってて」

 「なんでよー」

 「いいからいいから」

 「じゃあ、昼ごはん一緒に食べよ」

 「……考えとくよ」


 思ったより彼女を引き離すのに時間がかかったが、これで問題はないだろう。

 彼女にはちょっと申し訳ないことをしたと思う。

 昨日も同じようなことをしたが、お互いの立場を考えた上で、この行動をとった。


 ……心配が過ぎるかもしれないが、それでもやらないよりはいいだろう。

 彼女の隣に堂々と立つことができるのは、僕が変わった後だ。

 彼女の姿が遠くなったところで、自分もゆっくりと歩き出す。


 今日の昼ごはんはなんとかして断らないと。

 立場とか何も関係なしに、単純に緊張で胃に穴が空きそうだ。

 そうして断る理由を探しながら、学校に向かうのだった。

いつも読んでくださりありがとうございます!

面白いと思っていただけたら、是非ブックマークや評価をしたり、感想を送ってくださるとすごく嬉しいです!


また、アルファポリスにて恋愛小説大賞に参加中です!

良かったらそちらもよろしくお願いします!

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