始まりの終わり
「じゃあ、今日はもう解散な!」
澤谷先生がホームルームを終えて解散の指示を飛ばす。
あの後、無事に……というわけではなかったが、クラスの委員はひとまず決定し、先生に学校を案内してもらって教室に帰ってきた。
今日は色々と疲れたことだし、家に帰ってゆっくり本を読むとしよう。
そういえば、上坂さんはどうするんだろう。
彼女に視線を送ると、既に4・5人の女子の輪の中に入って楽しく談笑する彼女の姿が見えた。
やっぱり、彼女は僕と住む世界が違うのだろう。
すぐに友達を作って、食事にまで誘われている。
僕も誰かを誘えば良かったのだろうけど、あいにくそこまでのコミュニケーション能力は備わっていない。
それに、みんな緊張していて、それどころじゃなさそうだ。
実際、1人でいることが好きな僕にとっては好都合だ。
てきぱきと帰る支度を済ませ、荷物を持って外に出ようとする。
上坂さんが僕に声を掛けようとしているのが見えたので、先程と同じように口元で指を立てた後、手を振ってすぐに教室を出る。
きっと僕のことも誘おうとしたのだろうが、たくさんの女子に囲まれて過ごすなんて、僕には無理だ。
入学式初日から女子にモテモテで、ハーレムを作るという、ライトノベルのような展開は現実には存在しない。
仮に誘いに乗って一緒に食事に行くとなったら、きっとまともに会話できない。
調子に乗らずに、少しずつ人と接していく必要がある。
特に何事もなく駅に着き、電車に乗る。
周りにはたくさんの生徒。
1人でぼーっとしている人や、今日仲良くなった人と帰る人、これから遊びに行く人など様々だ。
イヤホンをつけ、自分だけの世界に入る。
僕が普段使ってるのは、ちょっと値段が高めのブルートゥースのイヤホンだ。
付属のイヤホンはコードがよく絡まるので、ストレスが溜まる。
ワイヤレスのイヤホンは、値段は高いしそもそも無くすのが怖くて手を出していない。
またこのイヤホンは、コードが絡まる心配はないし、値段は普通のよりは高いが僕でも少しお金を貯めれば買える額だ。
だから僕も気兼ねなく買えた。
それに、音の遮断性が高いことが1番の決め手だ。
イヤホンをつけると、外の音が大体遮断されて、自分の世界に入ることができる。
毎日、イヤホンをつけて音楽を聴いている時が1番落ち着くことができる時間だ。
早い時間に学校が終わったので、席も空いていた。
席について、目を閉じる。
本当に今日は密度の濃い1日だった。
まずここから1年。
楽しみではあるが、不安でもある。
ぼんやりと1日を振り返っているうちに、僕は眠りに落ちた。
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