第4話
「それにしてもひっまーですね」
「そんなこと言う暇があんだな。説明書1つ追加」
「そ、それは勘弁してくださいよー!もうパンクしそうです!休憩!」
きいが万屋に来て、1ヶ月が経とうとしていた。依頼人は来ておらず、今はきいの機械音痴を治すという平和な日々が流れている。そんなときコンコンと控えめなノックとここであってるのかな?という独り言が聞こえる。
「かいさん!!久しぶりの依頼人ですよ!早く出てください!逃げちゃう!!」
「逃げない」
かいはまた慌ただしくなりそうだと、空を仰いだ。
***
「それで!!!ご依頼内容は??」
きいは久しぶりの依頼とあってか、妙に張り切っている。かいはとしては、このやる気が空回りしないように祈るしかない。依頼人はヒューマノイド。身体は大きいけれど、なんだか小さく見える。
「あ、はい。僕ハボリテと言います。今日は相談したいことがあってきました··実はある方に恋をしていて告白しようと思うんです···」
「きゃー!!恋のご相談ですか!いいですね!それで!お相手はどんな方なんですか?!」
「彼女は花咲愛美というんですけど、本当に素敵な人なんです。僕、身体は大きいんですけど、小心者なのでハリボテって呼ばれてたんです。でも、彼女はそんな僕に優しく声をかけてくれて···きっとすごく勇気がいりますよね···だから、次は僕が勇気を出す番だと思ってます!」
「いいですね!いいですねー!ハボリテさんはどんな告白方法を考えてます?」
「···電子メールで想いを伝えようかと」
「それじゃーダメですよ!もっと勇気出さなきゃ!直接はどうです?」
「ちょちょちょくせつですか!?!?そんなの無理です!」
ハボリテは首をすごい勢いで振っている。今にも首がとれそうだ。
「かいさんはどう思います?」
「···動画を送るとか」
「他には!?」
「······サプライズでプレゼントを贈るとか」
「もうかいさんぜっんぜんダメですー!頼りになりませんね〜」
「じゃあ、俺に振るな!あんたが考えろ」
ハボリテは大丈夫だろうかと不安そう。それを感じ取ったのかきいは慌てて新しい案を出す。
「じゃ、じゃあ!ラブレターなんてどうです?渡すだけですし、それに手書きだから想いも伝わりやすいですよ!」
「···らぶれたー?なんですそれは?」
「え?知りません?」
かいの方を見ると、かいも微妙な顔をしていた。
「だいぶ昔にあったっていう風習だよな···俺も何回かしか聞いたことがない」
「そのらぶれたーって言うのはどんな告白方法なんですか?」
「えっとですね、紙に自分の相手への想いを綴って、便箋に入れるんです。そして、相手を呼び出し渡すんです!!最悪の場合渡せればセーフなのでハボリテさんでもいけるのでは?!」
ハボリテは考えてみたが、
「はい!それなら、確かに僕でも行けそうです!そうします!」
一段落つき、胸を撫で下ろした万屋であった。
***
「じゃあ、次は手紙に書く内容ですね!!でも、これはまあ簡単です!自分の想いをばーっと打ち明けちゃってください!」
「はい!ばーっとですね!えっと、いきなりすいません。迷惑かもしれませんが、」
「ダメです!ダメダメ!最初から腰が低い!」
「えぇ···そんな···じゃあ、どうすれば?」
「ほらかいさん!さっきの名誉挽回のチャンスですよ!」
かいはさっきのが余程悔しかったのか、かなり考え込んでいる。
「こういうのはどうだ。あのとき声をかけてくれた日からずっとあなたのことが好きでした。花のことを話すあなたの眩しい笑顔にはいつも元気をもらっています。」
「おぉー!!いいじゃないですか!!こういうの待ってました!」
かいは満足。当のハボリテと言えば、頭にはてな。
「なんで花のことって知ってるんですか!」
「今どきインターネットで特徴打って調べてみたら、大体のプロフィールは出るぞ。名前だとすぐだ。」
「へー!便利ですねー!」
そうやって、わちゃわちゃしながら手紙は進んでいき、ついに···
「「「完成ーーーー!!!」」」
「ふー!いいのが出来ましたね!これは上手くいきますよ!!」
「でも、いいんでしょうか···?彼女は人間で僕はロボットです。もし上手くいったとして僕なんかと結ばれて花咲さんは幸せになんて···」
「何言ってるんですか!愛に性別も種類も関係ないです!ハボリテさんが花咲さんを大好きで、花咲さんもハボリテさんが大好きでそれだけで幸せなんです!」
「ああ、それにそんなに相手のこと考えてるなら大丈夫だ。自分の気持ちどんと伝えてこい」
「万屋さん···ありがとうございます!僕頑張ってきます!」
そう言ったハボリテの後ろ姿はここに来た時とは比べ物にならないくらい大きく見えた。
***
「ハボリテさん上手くいったかなーー」
「大丈夫だろ、落ち着け」
落ち着きのないきいにそう言うかいも机をトントンと叩いており落ち着きがない。
「万屋さ〜〜ん」
「ハボリテさん!!···どうでした?」
「僕やりました!!彼女泣いて喜んでくれて···本当にありがとうございます!絶対に幸せにします!」
そう言い、ハボリテは力強く帰って行った。
「あぁ、本当に良かった!」
「···あんたも主人の所に帰りたくなったか?」
「···え?今、なんて、」
「そろそろあんたも帰りたくなったか?ヒューマノイドのキイ」