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おまけ1.好きと言って(オモテver.) 前編

おまけが始まります!


もしかしたら、本編のイメージを損なうかもしれませんので、そこを了承していただける方のみ、お読みください。


オモテのくせに前後編。

どれだけおまけに力注いでいるのか・・・。

「おかえりドルク、大好き!」

「そりゃどうも。ほら、夕飯にするぞ」


仕事から帰ってきてドアを開けた瞬間を狙って飛びついたフェリシアは、呆気なく告白相手に顔を鷲掴みにされ、今日も【お帰りなさいのハグ(できればチューも)】作戦は失敗したと悟った。




ドルクとフェリシアが城下町で二人暮らしを始めて早数ヶ月。

二人の中は以前よりぐっと深まって・・・いなかった。


毎日愛の告白をしても、心のこもった手料理(という名の炭の塊)を振る舞っても、嬉し恥ずかしお風呂でばったりハプニングを起こしても、ドルクは全く相手にしない。

それどころかフェリシアの名前も呼ばれない。

奇跡の生還からの名前連呼からのお姫様だっこは、フェリシアの妄想だったのではないかと思うほどだ。


フェリシアは焦っていた。

300年生きていても、色恋に関しては全くの未経験。

フェリシアが思いつく作戦は全て決行済みである。


「うぬぅ・・・これは、知恵を借りるしかないか・・・!」


フェリシアは、さっさと身支度をしに自分の部屋に向かった大好きな人の背中を睨みながら、頭の中で算段を立てた。




・・・・・・・・・・・・




「と言うわけで、どうしたらいいと思うっ!?」


バン、と勢いよくテーブルを叩いたが、全く埃が舞わない。

自分が使っていた頃とは大違いの清潔に整えられた部屋で、フェリシアは座っている面々に意見を求めた。


「意外に黒の団長は意気地がないのか?それともそろそろ不能に、」

「そんなことないから!絶対ないから!」


自分の方が年上のくせにさらっと失礼なことを言う国王を怒鳴りつける元・魔女、現・ただの町娘。

甚だおかしな状況に、部屋の主が片手で頭を抱えて発言した。


「あの、そもそもなんでここでバカ元師匠の恋愛相談なんかしなくちゃいけないんでしょうか・・・?」

「だって私知り合いいないもん!あとドルクのこと知ってる人の方がいいかと思って。って言うか何よ【バカ元師匠】って!名前みたいに言うな!」

「もう師匠じゃないですし、バカは治ってないみたいですから【バカ・元・師匠】で合ってるでしょ?この状況、大変迷惑なんで。僕仕事中ですし。あなた、もう部外者ですし。帰ってください」

「うるさい。あんまり聞き分け悪いと、メアリちゃんにあんたの黒歴史全部ばらす」


唸るように告げたフェリシアの一言で、それまでさっさと追い出そうとしていたティムの動きが止まった。


「・・・何故、メアリのことを・・・?」

「あら。もう呼び捨てで呼ぶ仲なの?ティムのくせにやるー!」

「フェリシア、誰だ?メアリとやらは」

「ティム君の想い人でーす!私が王宮生活してる時に手伝ってくれた侍女ちゃんの一人で、清楚系の優しいかわいこちゃんだよ?あと、隠れ巨乳」

「ちょ、なんで国王様にまで言うんですかバカ元師匠!」

「あーら、そんなこと言っていいのかなー?メアリちゃんと私、文通し合う仲なんだけど?」

「なっ!」


ティムが何も言えなくなったのを見て、勝ち誇ったように笑ったフェリシアは、「さて」と国王に向き直った。

ちなみに国王は、護衛を撒いて仕事を抜け出してきている。


「で、どう思う?ミハエル」

「やっぱり少女趣味じゃないから、じゃないか?今からでも遅くないぞフェリシア。俺のところに来ないか?」

「は?行くわけないでしょ。それよりドルクよドルク!ねえ、どうしたら好きになってくれるかなぁ?」


国王の誘いを瞬殺し、悩ましげにため息を吐くフェリシア。

その姿は初恋に戸惑うただの乙女で、誰も300年以上生きた魔女とは思わないだろう。


「俺はドルクのことをそこまで知らないからな」

「同じくです、バカ元師匠」

「・・・ちっ。相談相手間違えた」


はしたなく舌打ちをした少女を咎めるでもなく、国王はフェリシアの頭に手を乗せて言った。


「だからな、一番ドルクに詳しそうなやつを呼んだ」

「え?」

「そろそろ来るはずだぞ」


そう言い終わるかどうかという時に、ティムの部屋のドアがノックされた。


「失礼いたします。黒の騎士団副団長ヴェルゼイ、国王からの勅命で参りました」

「おう、入れ」


ドアを開けて入ってきたのは紛れもなく、ドルクの右腕でもあるヴェルゼイで。


「顔を上げろ。礼もいらんぞ」

「は、」


片膝をついて騎士の礼を取ったまま、室内にいる顔ぶれを見た瞬間、ヴェルゼイのその美しいと評判の顔がぴしりと固まった。


「・・・これは・・・どういう・・・?」

「ヴェルゼイ、待っておったぞ。どうだフェリシア?ヴェルゼイならドルクのことを一番理解していそうだろう?」

「いや、そうかもしれないけど!ヴェルゼイ様まで巻き込むのはやり過ぎだよミハエル!」

「フェ、フェリシア様!国王は呼び捨てで私を様付けはやめてください!」


ヴェルゼイは大慌てで訂正を求めるが、当の本人たちはというと。


「え、今更ミハエルに『様』とか無理」

「俺もそんな他人行儀は嫌だな。俺とフェリシアの仲だし?あと、今はプライベートな時間だから、かしこまらなくていいぞ?」


意味ありげな国王からの流し目を無視しているフェリシアに、ヴェルゼイは騎士の礼を崩してため息をひとつ吐き、ティムが進めた椅子に腰かけた。


「ではせめて、私のことも呼び捨てにしてください、フェリシア様」

「私のことこそ呼び捨てでいいよ?ヴェルゼイ。今はただの町娘だから」

「そう言うわけには・・・。では、フェリシア嬢。今日はどのような集まりでしょうか?」


ヴェルゼイはドルクから、【時の魔女】フェル・テンプスに起こったことはすべて聞いている。それ故、フェリシアのこともよく知っていて、いざとなればフォローに回る役割を担っている。

が、まさか早くも役目が回ってくるとは、と真面目に考えるヴェルゼイは、次の一言で再び固まった。


「それがなヴェルゼイ、フェリシアがドルクの落とし方を知りたいって言うんだよ」

「・・・・・・は。落とし方?」

「俺はもういっそ、既成事実をつくっちまえばいいと思うんだがな」

「と言うと?ミハエル」


具体案が出たとあって、フェリシアはミハエルの方にグイッと顔を寄せる。

ミハエルはニヤリと腹黒い笑みを湛えた後、おもむろに切り出した。


「体の関係をもてばいい。あいつは堅物っぽいからな、そしたら責任とって結婚とか言い出すだろ」

「・・・体の関係・・・」

「やり方知ってるか?フェリシア。知らなきゃ実地で教えてやるぞ?」

「こ、国王様!それはさすがにご冗談が過ぎるというものでは!」

「んー?ティム?お前初心(うぶ)だなぁ。このくらいの会話で真っ赤になっちまうのか」

「ししし知ってるよ!伊達に300年生きてないし!み、見たことだってあるし!」

「ほう?」

「・・・牛の交尾なら」

「ぶふっ」


勢いよく噴き出して爆笑している国王に、ゆでだこのように真っ赤になっている弟子、馬鹿にされて真っ赤になっている元師匠のにぎやかな会話をじっと聞いていた唯一の常識人が、口を開いた。


「大変失礼ですが、フェリシア嬢」

「はい?」

「貴女は、おいくつになられたのですか?」

「えーと、多分14歳?かな」

「え、僕より年下なの!?」

「1歳だけでしょ!」


ゆでだこから立ち直ったティムに驚かれ、フェリシアはすぐさま反撃する。


「我が団長は28歳。親子ほどではないですが、それでも無視できない歳の差です。しかも、成人同士ならまだしも、貴女はまだ成長途中。・・・おそらく、団長は待っているのではないでしょうか。あなたがきちんと成長し、大人になるのを。どうしてそんなに急いでいるのですか?時間はたっぷりあるのだから、ゆっくりと愛をはぐくんでいけばいいと、私は思うのですが」

「・・・時間が、無いかもしれないから」


小さな小さな呟きは、誰の耳に拾われることもなく、フェリシアの口の中で消えていった。


「え?」

「何でもない。とにかく今すぐどうにかしたいの。あ、そうだ!私、娼館に行って勉強してくるから!じゃあね!」

「あ、師匠!」

「何?」


今にも出て行こうとしたフェリシアを呼び止めたティムは、少し言いにくそうに口ごもった。


「あの・・・テン様は、本当に、いなくなったんですよね・・・?」

「うん、本人が言ってたからね。精霊樹のもとで、まっさらになったんじゃない?」

「そうですよね。すみません、今更なこと聞いて・・・」

「別にいいよ。ウァリーは元気?」

「はい」

「そう。・・・大切に、してあげてね」


それだけ言うと、フェリシアは身をひるがえして部屋を出て行った。




「そうだよな。僕の気のせい・・・だよな」


一人でぶつぶつと呟いているティムを横目に、国王と騎士はお互いの見解を述べ合う。


「ヴェルゼイ、実際のところどうだと思う?俺はドルクがあいつのこと何とも思ってないとは思えないんだが」

「ええ、あの過保護っぷりを見ると、どう見ても溺愛しているとしか・・・」

「あーでも、ちょっと母親っぽいかもな?できの悪い子供に愛情注いじゃう系の」

「・・・まあ、そう見えなくもないですね。団長は、なんだかんだ面倒見が良くて、部下からも慕われてますから」

「なんにせよ、フェリシアの努力が実を結ぶといいんだけどなぁ。・・・あいつの体が幼いのは、どうしようもないからな」

「・・・そうですね」

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