第1話 始まりの流れ星
この国の名前はラドクリフ。昼間は、貿易が盛んな国としてたくさんの人々で賑わっている。
夜になると、この国で一番高い天文台から綺麗な星空が見渡せる。
ラドクリフには不思議な言い伝えがある。
13日の金曜日、ラドクリフで一番高い天文台から流れ星をみると、願いが一つだけ叶うというものだ。
だが、13日の金曜日に流れ星が流れたことは過去に一度もなく、この言い伝えはすでに人々から忘れられていた。
そして、今日は13日の金曜日。はたして、天文台に登って流れ星を探している人はいるのだろうか?
第1話 始まりの流れ星
「あ〜綺麗な星空だね・・・ねぇ?カイン?」
銀色のショートヘアーを持つ少女が天文台から身を乗り出して星空を眺めていた。
「・・・そうだな。」
少女の隣で壁に寄りかかって座っていた少年は目を閉じたまま軽く返事をした。
「相変わらず、つれない返答だね?なんか、もっとこうパーっとした華華しい返事できないかな?」
「うるさいな、こっちは毎日依頼が来て疲れてるんだよ」
少女は納得したという顔で少年を見下ろしていた。
「モアさんのギルドに入ったんだっけ?どう、やりがいあるの?今の仕事は?」
「・・・・・いや」
少年は面倒くさそうに目をつむったまま返事をした。
「そっか・・・無理ないよね?カインはこの国で一番強いんだから。」
「ああ・・・この辺りじゃもう自分の力を極めることは出来ないな」
少年はようやく目をあけた。彼の目の色は透き通った青色だった。
「あ、流れ星・・・」
空を見渡すと無数の白い流れ星が、黒い夜空を流れ始めていた。
「カイン、立って!流れ星だよ!!今、ここで願い事を心の中で念じればその願い事が叶うんだよ!?」
何回も少女に肩を叩かれた少年は重い腰をあげて彼女の隣に立った。
少女は両手を組み、目を瞑って何かを呟いていた。
そんな少女をみて、少年も黒と白がいりまじった空を見上げて、願い事を呟いた。
退屈な毎日から解放されたい。俺にしか倒せないような、強い相手が欲しい・・・
「私はもう、願い事したよ。カインは?」
満足そうな表情で少女は隣に立っている少年に聞いた。
「願い事か・・・叶うなら・・・」
少年は独り言のように呟いた。その言葉は少女には聞き取れなかった。
「えっ?」
「いや、なんでもない。それより俺明日も早いんだ。そろそろ降りないか?」
「あっ!そうか!ごめんね、今日は付き合わせちゃって。ありがとう、楽しかったよ?」
この夜カインという少年が念じた願い事が後々大変なことになるとはこの国の人も、当の本人たちもまだ知らなかった。