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女刑事と吸血鬼 ~妖闘地帯LA  作者: ビジョンXYZ
Case7:『シューティングスター』
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File5:フロム・ジ・アウタースペース


「あ、あなたが何故クレア達と……。まさかあなたもFBIなの?」


 高校卒業後の彼の足取りは全くの不明だったが、まさかFBIになっていたとは意外だった。だがクリスは、ローラの思い出話(・・・・)に不快気に顔を顰めながらも鼻を鳴らした。



「FBI? 違うな。今の俺はNRO(国家偵察局)のエージェントだ」



「エ、NRO…………って、何だっけ?」


 ローラの大真面目な回答にクリスが少しつんのめる。ニックが軽く噴き出しながら補足してくれた。


「まあ知らないのも無理はないさ。連邦政府直属の諜報機関の中でも特に秘匿性が高い機関だからね」


「ちょ、諜報機関ですって?」


「そう……CIAやDIAなんかの名前は君も聞いた事があるだろう? 基本的にはあれらと同じさ。その中でも主に……航空宇宙技術(・・・・・・)の軍事情報なんかを管理している」


「……っ!」

 ニックの説明に目を剥いた。航空宇宙技術……。その情報を専門に扱う諜報機関がこの時期にLAを訪れた理由は、タイミング的に考えても一つしかあり得ない。『シューティングスター』の正体に関する自分の予測は本当に当たっているかも知れない。


 だがそれと同時に、まさかあの(・・)クリスがそんな連邦政府の諜報機関の一員として再び自分の前に現れた事にも驚きを隠せなかった。これは偶然……なのだろうか。



 クリスが咳払いして居住まいを正す。


「おほん! ローラ、君がこのLAでここ数年の間に立て続けに体験している、一連の超常犯罪(・・・・)については聞き及んでいる。大層なご活躍のようじゃないか」


「……!」

 ローラは咄嗟にクレア達の方に視線を向けるが、クレアは目を細めて頷いた。どうやら人外の存在について既にクリスも了承しているらしい。 


「我々はこれらの事件に何らかの繋がりがあるのではと睨んでいる。そしてその中心には常に君がいるという事もな」


「な……」


 ローラは再び目を見開く。まさかこのLAでの事件が政府の注目を集めていたとは知らなかった。いや、冷静に考えれば注目を引いてもおかしくはない事件の連続ではあったのだが。


 そして彼等もやはり一連の事件に繋がりがあると睨んでいるのだという。


(まさか『黒幕』の存在についても何か知っているのかしら?)


「そして極めつけは今回のこの……『シューティングスター』だ。君は既にこの事件について捜査を開始しているんだろう? これまで数々の人外と関わってきた君の目からして、今回の事件……『シューティングスター』の正体をどう見る?」


「…………」


 こちらを試すようなクリスの口ぶり。恐らく彼等は既に確証を得ているのだろう。ならばネルソンの前では口が裂けても言えないような突飛な説も言ってしまって構わないはずだ。



「……笑いたければ笑って頂戴。『シューティングスター』の正体は……より高度な文明を持つ異星人・・・じゃないかと睨んでいるわ」



 誰も笑う者はいなかった。嘲笑の代わりに聞こえてきたのは、拍手。


「いや、素晴らしい。この少ない手掛かりの中から、この短期間でその結論に到達するとは。やはり既存の固定観念に捉われない価値観という物は大事だな」


 クリスが嬉しそうな表情で手を叩いていた。ニックも軽く口笛を吹いていた。


「……否定しないのね? じゃあやっぱり『シューティングスター』は……」



「そう……君の言う通りだ。あれは外宇宙からの来訪者。この銀河系内か、もしくは別の銀河からやってきたのか……そこまでは解らんが、この地球より遥かに進んだ文明を持っているのは間違いない」



「ら、来訪者……。一体何の目的で?」


 ローラの問いにクリスはかぶりを振る。


「アレが地球を訪れた大元の目的は不明だ。だが今、『シューティングスター』と名付けられてこの街で連続殺人を起こしている理由に関しては、ある程度類推が出来ている」


「え……!?」


 驚くローラを余所に、クリスはニックの方に視線を向ける。ニックは肩を竦めて説明を引き継いだ。



「このクリス氏と色々協議を重ねた結果、『シューティングスター』はこの街で点取りゲーム(・・・・・・)に興じている可能性が高いという結論に至ったんだ」



「…………は?」

(ゲーム? ゲームですって? 今、点取りゲームって言ったの?)


 愕然とするローラに、ニックは少し面白そうな表情になる。


「まあ、気持ちは解るよ。余りにも馬鹿げているからね。でもそう考えると、色々と辻褄が合うんだ。奴はわざと事前にターゲットに殺害予告を送り付けて、ターゲットの自衛・・を促している。そしてその障害・・を排除してターゲットを抹殺できればクリアだ。当然だが回を重ねる毎に事件は有名になり、ターゲットの自衛の規模はどんどん上がっていく事になるはず。奴にとっては、徐々に難易度が上がっていく楽しいゲームという訳さ」


「……!!」


 『シューティングスター』が有名人や金持ちのエリートばかり狙っているのもそれが理由か。特に7人目のターゲットのジェニファーは、その自覚もないまま奴にとって格好の娯楽を提供してしまったのだ。


「まあ、個人で出来る自衛としてはジェニファーが最高レベルだったろうね。次はいよいよ……警察戦力の投入になるだろうからね」


 事件がここまで有名になり、かつ犯人は大勢のギャングすら物ともせずに殺害予告を実行したという事実があるので、次のターゲットは自分から警察に駆け込んでくる可能性が高い。


 そして警察も威信に賭けて、警備部やSWATなどの大規模な戦力を投入する事になるだろう。だが『シューティングスター』がこれまでの超常犯罪に関係しているのだとすれば、警察の手にすら負える相手ではないはずだ。最悪『エーリアル』事件でのグリフィスパークの悲劇が……いや、もっと酷い事になる可能性だってある。



「そして警察でも駄目なら、更にその次は軍隊まで行くかもね。それこそ『エーリアル』の時みたいに。『シューティングスター』の最終的な目標も対軍隊だと思うしね」


 それ以前に、その時には警察にも多数の死傷者が出ているという事になってしまう。そうなる事が解っているなら、今の内になんとしても阻止しなければならない。


「君が何を考えているかは分かっているぞ。無駄な事はやめておけ」


「……っ!?」


 まるでローラの心の内を読んだようなクリスの言葉に動揺する。


「次のターゲットが警察に駆け込んで来たら保護せざるを得まい。その時何と言うのだ? 相手は宇宙人で警察の手に負える相手じゃないから、軍隊を要請して下さいとでも言うのか? 誰が信じる? 単に君が正気を疑われて休職させられるのが関の山だ」


「く……!」


 ローラは歯噛みした。悔しいが彼の言う通りだ。まして捜査責任者がジョンならいざ知らず、あのネルソンでは結果は火を見るより明らかだ。


「唯一阻止できるとしたら、次の犯行前に『シューティングスター』の所在を明らかにして、何らかの対処・・をするしかないが……色々な意味で困難だろうな」


 これまでのパターン通りだとすると、次の犯行・・まであと一週間ほどしかない。



「ふ……まあ精々頑張ってみるんだな。お手並み拝見といこうか」


 クリスが薄い笑みを浮かべて焦るローラを眺める。やはり彼は高校時代にローラ達がした事を未だ根に持っているのかも知れない。今にして思えばあれは少々やり過ぎだったと思わないでもないが、だからと言って謝罪する気はない。


 クリスは立場上、恐らく『シューティングスター』に確実に接触できる次の犯行を待つ気だろうがそうはさせない。その前に何としても奴の所在を暴いて犯行を止めてみせる。


 ローラはかつての恋人の前で、そう固く決意するのだった……


次回はFile6:8人目のターゲット

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