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女刑事と吸血鬼 ~妖闘地帯LA  作者: ビジョンXYZ
Case5:『バイツァ・ダスト』
152/348

File28:モテる女は辛い?

「グ……ウゥゥ……」

「……! ジェシカ! 大丈夫!?」


 カルロスの最後を見て取ったジェシカが苦し気に呻きながら変身を解く。ローラ達は慌てて駆け寄った。ジェシカは傷付いた身体ながら気丈に笑った。


「へ、へ……やったんだな……? あたし、ローラさんの助けになれたかな?」


「助けになったなんてモノじゃないわ! ジェシカが奴を足止めしてくれなかったら絶対に勝てなかったわ!」


 ローラの言葉にクレアもヴェロニカも大きく頷いた。それは紛れもない事実だった。


「へへ……ならいいんだ。本当に良かった……」


 ジェシカも満足げに微笑んだ。ローラはクレアとヴェロニカの方も振り返った。


「2人もよ。ヴェロニカは勿論だけど、クレアの機転が無ければ打開策を見出せずに押し負けていたと思うわ」


 ローラの意見にヴェロニカも頷いた。


「本当ですよ。自分の力なのに、あんな事が出来るなんて思いもしませんでした」


 クレアがちょっと照れくさそうに視線を逸らす。


「ま、まあ、若い子達が命がけで頑張ってるのに、いい大人がそれに頼り切りって訳にも行かなかったからね。役に立てて良かったわ」


 4人は何とはなしに笑いあった。皆で協力する事で強敵に打ち勝ったという充実感と連帯感がそこにはあった。



「さあ、早い所帰りましょう。きっと皆心配してるだろうし。……といっても、ジェシカとヴェロニカはそのまま帰るって訳にも行かないわね」


 裸のジェシカは勿論、着の身着のまま大分薄汚れてきている水着姿のヴェロニカも街中に出られる格好ではない。


「もう敵はいないようだし、地上階で何かシーツのような物がないか探してみましょうか」


 クレアの提案でとりあえず地下を出て、地上階への階段を上がっていく一行。するとジェシカがローラの横に寄り添って腕を組んできた。


「ん? ジェシカ、どうしたの?」


「へへへ……何でもないよ。でも、しばらくこうして組んでてもいいかな?」


「? まあ、別にいいけど……」


 許可すると、何故か少し頬を赤らめながら増々嬉しそうにローラに密着するジェシカ。するとやはり何故か並んで歩いていたヴェロニカがスッと目を細める。


「……ジェシー? どういうつもりかしら?」


「ふふん。ローラさんは渡さないよ、先輩?」

「……ッ!」


 何故かヴェロニカの顔が引き攣る。


「え、ちょっと、ジェシカ? 何を言って……」


「――ローラさん! 私とも腕を組んで貰えますよね!? ねっ!?」

「ヴェ、ヴェロニカ!?」


 ローラの戸惑いを無視して、強引にジェシカとは反対側の腕を組んで密着してくるヴェロニカ。プロポーション抜群の豊かな胸がローラの腕に押し付けられる。


「ローラさん。私、気付いちゃったんです……」


「な、何に……?」


 妙に真剣な顔のヴェロニカに、恐る恐る問い返すローラ。


「私、ダリオさんの事が好きでしたが……つい先程、自分がバイ(・・)だった事に気付いたんです!」


「え……ええ!?」


「解ってます! ローラさんにはミラーカさんがいらっしゃいます。でも……私、自分の気持ちに嘘は付けません! す、好きです、ローラさん! ミラーカさんの『次』で構いませんから……わ、私とも付き合って下さい!」


 声を震わせて縋るような眼差しで見つめてくるヴェロニカ。明らかに真剣だ。ローラは大いに焦った。


「え、ええと……ヴェロニカ? き、きっと今は気持ちが昂っててそう錯覚してるだけ――」


「そんな事ありません! 自分では気づいていませんでしたが、少し前からそういう感情はあったんです! 今、それをようやく自覚したんです!」


「……ッ!」


 ローラは息を呑んだ。今ではすっかりミラーカに開発・・されているローラである。自分がどちらかというとゲイ気質な事は充分自覚出来ていた。ヴェロニカのような美女からの告白が嬉しくないと言えば嘘になる。だが……


(ミ、ミラーカに相談してみるべきかしら? 流石に彼女に黙って……という訳にも行かないし……)


 それをやると浮気・・になってしまう。勿論ミラーカだって日々エスコート業で大勢の女性と関係を持っている訳だが、それとこれとは話が別だろう。


「う、うーん……。と、とりあえずミラーカに聞いてみていいかしら? もし彼女がOKしてくれたら、私の方は大丈夫……だと思う、わよ?」


 悩んだ結果、即答を避けるような消極的な返事になってしまう。ローラはこういう方面で自分が意外と優柔不断である事を知った。だがヴェロニカはパッと顔を輝かせる。


「ほ、本当ですか!? あ、ありがとうございます、ローラさん! これから宜しくお願いします!」


 すっかりその気になって抱き着いてくるヴェロニカに、ローラは目を白黒させる。


「ま、まだ決まった訳じゃ――」


「えーー!? 先輩ばっかりズルい! ……ローラさん!! アタシだってローラさんの事、前から大好きだったんだ! 先輩がいいんならアタシだっていいよな!?」


「ジェ、ジェシカ!?」


 反対側からジェシカが口を尖らせながら、上目遣いにローラを見上げてくる。


「なあ、いいだろ、ローラさん!? ミラーカさんにアタシの事も聞いてみてくれよ!」


「ふふん、ジェシー? 諦めなさい。あなたはまだ高校生なんだし、こういうの(・・・・・)はまだ早いと思うわよ? ねぇ、ローラさん?」


 ヴェロニカが勝ち誇ったような顔でローラに同意を求めてくる。ローラが何か言う前にジェシカが抗議の声を上げる。


「何だよ! 先輩だって二つしか違わないだろ!? ローラさんと出会ったのはアタシの方が先なんだ! アタシにだってローラさんと付き合う権利・・がある!」


「あ、あの、2人共落ち着いて……」


 思わぬ成り行きにローラが慌てて宥めようとすると、何故か2人の視線の矛先がローラに向いた。


「ローラさん? 勿論、警察官のローラさんが未成年の高校生に手を出すなんて事しませんよね?」


「高校は後一年足らずで卒業だよ! そしたらアタシだって成人だ。それならいいだろ!?」



「ええ……そ、その……ク、クレア、何とかして!」


 2人に詰め寄られたローラは進退窮まって、呆れたようにこの騒ぎを眺めているクレアに助けを求めた。クレアは苦笑して肩を竦めると、とりあえず2人を宥める方向に回ってくれた。


「ほらほら、2人共。ローラが大好きなのは解るけど、好きだからこそ余り困らせては駄目よ? とりあえずローラは、ジェシカの意思も含めてミラーカに話をしてみたらいいんじゃない? で、2人はそれまできちんと待つ。ミラーカがOKしてくれて、2人もその時まで今の気持ちが変わっていなければ、その時改めて付き合うなり何なり答えを出せばいいと思うわよ? そういう感じでどうかしら?」


 クレアに諭される事でヴェロニカもジェシカも、自分の感情先行でローラを困らせていた事に気付いてバツの悪そうな顔になる。


「ご、ごめんなさい、ローラさん。私、自分の事ばっかりで……」


「ア、アタシもちょっと焦っちゃって……。でも気持ちは真剣だから、ミラーカさんには話してみて欲しいんだ」


 2人が冷静になったのを認めて、ローラはホッとしたように肩の力を抜いて微笑んだ。


「いいのよ、2人共。私こそすぐに答えを出せなくてごめんなさい。でも2人の気持ちが真剣なのは解ったから、私もきちんと考えてみる。その上でミラーカに話をしてみるから、それまで待っててくれるかな?」


 ジェシカとヴェロニカは素直にコクッと頷いてくれた。ローラはクレアにも顔を向けた。


「ふぅ……ありがとう、クレア。助かったわ」


「ふふ、どう致しまして。モテる女は大変ねぇ?」


 と、しっかりと揶揄されるローラであった……


次回はFile29:王の余興


脱出を果たそうとしたローラ達の前に、メネス王本人が現れる。

服従を迫るメネスに対して、ローラ達は徹底抗戦を決意するが――!?

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