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Project OZ: Finale

作者: アマツ キサラギ

無題

「オズ」という概念が消えた世界に、誰が気付くことができただろうか。

一体だれが、一人の青年の消失を思い出すことができるだろうか。

きっと、時が経てば忘れられてしまう、ひどく矮小で脆弱な、

それでも輝こうとして、地に落ちたままだった一人の青年。


自嘲を重ねるしかないほどに、手詰まりを感じていた。

独りだけで文字を並べて、地の果てまで行ってしまおう。


理解なんかされなくっていい。

独りのまま、誰も内面に入れたくはない。

たった一人の温かい手が、僕を包んでくれていれば、それでよかったのだ。


忘れることなどできなくなった、本当は平凡だったはずの日が、

この集合の中で、小さくくすぶる炎だったものを大きく膨らませて、

そうして地球を覆った。


これは償いだ。

誰かを苦しめた罰。

誰かを悲しませた罰。

そのようにしか表現できなかった罰。


自分が嫌で仕方なくなった、その末に待ち受ける終了。


世界を見てほしかった。

声を聞いてほしかった。

自分を見つけてほしかった。

こうして感情をそのままに打ち出す間も、きっと涙は止まらない。


世界は美しい。

美しいと感じたから、僕はそれを模倣したかった。


あといくつ、あといくつ?


いくつでも作ってやろう。

気が済むまで続けなさい。

誰かが見ていてくれるのだから。


見てくれる、なんて、そんなことはいい。


僕は書きたいし、歌いたいし、笑いたいし、幸せに暮らしたい。

何かを作り上げるのが好きだ。


感情を外に、普通じゃないパスを通して、拡散するのが好き。


ならば下手だって続けたい。

続けていきたい。

永遠に作り続けよう。


この小さな世界を、永遠に組み立て続けよう。

名前は貰った。それはすなわち僕の意味だ。


大切にしよう。それはすなわち僕の命だ。


誰にも見てもらえないことを望む。


誰もが忘れることを望む。


打ち棄てられる美しさを、僕は僕自身に見る。


だから、こうした。切り離して、僕もそこへ行こう。


けれど、少しは見てほしい。なんて、我儘だろうか。

きっとそうなのだけれど、それでも見てほしい。

それでも見つけてほしい。

強がっていたわけじゃなく、二つが共存しているだけなのだ。


僕は二人いる。

だから、二人にとって住みよい場所に分けよう。

そうすれば、どこかでまた、苦悩が収まったころに、


また、あなたにも会えるのだろうか。



オズ

名称:「忘れられた日」→改称:「未知恐怖性感染精神症」

人類全般に発生しうる感情のひとつです。未知の脅威に対する精神的耐性が極端に低下し、リスクを一切考慮することなく対象を絶滅しようと試みます。旧報告書の執筆者を含む全リサーチャー職員が罹患したことにより、インシデント"2017年終末事件"が発生しました。

集団恐怖心は世界システムそのものに影響を与えることがわかっており、この影響により確保中の全てのオズの異常状態が誘発されたことで、事件内において語られた"2017年12月31日に人類が危機に晒される"との無根拠な予言が現実のものとなる寸前に至りました。


―――廃墟内から発見された文書

   アマツ・キサラギにより世界線αにて回収

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