弐ノ道ー和ー②
余談だが、紲はシュールストレミングの臭いを嗅いだことはおろか、見たことすらもない。
ましてニシンの塩漬けの缶詰であることなど知る由もない。
それはそれとして。
実際どうなのだろう。
この少女は信用に足る人物なのだろうか。
「何ボーッと突っ立てるんですか夢野君。早く席に着いてください」
この教師は、人の気も知らないで。
紲は渋々席に着いた。
窓際の席である。
そして授業が始まった。
どうやら鈴木は国語の教師だったらしい。
しかしどうして国語の授業というものは、こんなにも眠くなるのだろうか。
何とはなしに外を見てみる。
いつの間にだろうか雨が降っていた。
外が暗いせいか教室の様子がガラスに反射して見えた。
そこには先程の立花も映っている。
こうして見るとかわいい顔をしている。
いや、かわいいというより綺麗な顔か。
なんというか猫みたいな顔をしている。
そんな事を考えていると立花が不意にこちら側を向いた。
やべっ。
目が合ったか?
「どうした?俺に何か用か?」
合ってた。
それに、俺って。
一人称俺って。
「いや・・・別に・・・」
「そうか?ならいいんだけど」
何故だか気が重い。
早いとこ授業が終わってくれないもんだろうか。
残りの10分間、彼は30分くらいに感じていた。