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壱ノ道ー鈴ー⑥
「命令に背くとどうなるんです?」
興味本位で聞いてみた。
「さぁ?どうなるんでしょう」
期待はずれにも程がある。
この人は何も知らないんじゃないか?
本気でそう思ったが、どうやらそうではないらしかった。
「気分ですよ気分。私の機嫌が悪ければ死。機嫌が良ければ生です」
クズ過ぎる。
職権乱用とは正にこのこと。
先行きが不安すぎる。
「因みに、今はちょっとだけ機嫌が悪いです」
僕のせいですか?
僕の遅刻のせいですか?
そうですよね分かります。
「あの…なんか、すみません」
「別にいいですよ。謝意は今後の授業態度で示してください」
「………」
「………」
無言になってしまった。
何とはなしに。
「そろそろ入りませんか?」
とは、紲の提案。
「そうですね。もう5限目も始まっていることですし」
ここから。
ここからだ。
ここから、記憶のない少年夢野紲が何者かになるための物語が始まる。