参ノ道ー花ー②
結局、立花が案内することになった。
どうやらジャンケンで決めたようだった。
あそこまでマジなジャンケンは初めて見た。
何より負けた久津和が気持ち悪かった。
身長2メートルの巨漢が女々しく泣いているのである。
「うおおお!ちくしょーーー!」
そこまでガチで泣かなくても良いと思うんだけど・・・。
「じゃあ行こうぜ!夢っち!」
「あ、うん・・・」
紲は立花に手を引かれ教室をでた。
久津和のことが若干気になるが、すぐに立ち直るだろう。
たぶん・・・。
ーーー
ところ変わって屋上。
移動中何故かずっと立花に抱きつかれていた。
後ろから。
身長差があるので首に手が巻き付けられていた。
恥ずかしくは無かったが、首に手を掛けられるというのはあまり心地良いものではない。
移動中に聞いた話だが彼女の名前は立花絆というらしかった。
自分と同じ意味の名前に若干親近感がわいた。
「俺さ、こっからの景色が嫌いなんだよ」
立花は唐突にそう言った。
その言葉は、あまりにも唐突で、あまりに自然だった。
ともすれば聞き逃してしまいそうな言葉だった。
しかし、ここでの“嫌い”という言葉には多少なりとも違和感があった。
嫌い。
好きではなく嫌い。
確かに、見渡す限り家ばかりで、つまらない風景ではある。
ただ、嫌いにはなりきれない哀愁のようなものを、そこには感じた。
「こういう、いかにも日常っていう雰囲気が俺は嫌いなんだよ・・・」
そう言った彼女の横顔は、どこか悲しそうな顔をしていた。