参ノ道ー花ー①
紲は愛想笑いをしながら久津和と会話を続けていた。
会話というか久津和が一方的に話し掛けているだけだ。
紲は帰りたいどころか今すぐ眠りたいまでになっていた。
それほど久津和と接するのは疲れる。
そこでまた机を叩かれた。
やめてやれよ。
机が可哀想だろ。
誰かと思って顔を見上げると、今度こそ立花だった。
こうしてみると予想より大分背が高い。
久津和とほぼ変わらない身長である。
何やら怒っているようだ。
「ちょっと久津和、いい加減にしろよ!」
「は?何だよ、いきなり・・・」
「お前話長過ぎんだよ!こっちはずっと待ってたんだぞ!」
ずっと待ってた・・・?
久津和のことを?
二人は付き合ったりしているのだろうか。
だとしたら悪いことをした。
悪いの紲では無く久津和なのだが・・・。
「せっかく夢っちに学校を案内してやろうと思ってたのに」
“夢っち”とは紲のことだろうか。
だとしたらどうなのだろうか、そのネーミングセンスは。
それに待っていたのはどうやら紲の方だったらしい。
何故かすまなく思ってしまう。
悪いのは久津和なのだが。
「それなら俺が案内してやるよ。紲も俺の方が良いだろ?」
これは久津和の発言。
それを僕に聞くのか。
はっきり言ってどっちでも良い。
もっと言えばどちらも嫌である。
「アハ・・・僕はどっちでも良いよ?」
またしても愛想笑い。
本音はすぐに帰りたい。