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弐ノ道ー和ー③
授業が終わって放課後。
紲は帰り支度をしていた。
今日は早く帰りたい。
なんとなく教室から早く出たかった。
準備を終え、帰るため席を立とうとした正にその時。
大きな音で机を叩かれた。
一瞬、立花かと思ったが、腕を見る限り男の腕だった。
顔を上げると体格の良い大男が立っていた。
はて、どこかで見た事のある顔だ。
「よお、お前、白木道場の夢野紲だろ?俺は龍命館の久津和金剛覚えてっか?」
覚えている。
というか、同年代の空手家は彼しか知らない。
龍命館。
門下生を100名以上抱えている、超名門の空手道場である(白木道場とは比べものにならない)。
久津和は中学生ながらそこの主将をしていたはずだ。
高校生も入門している龍命館で、中学生の久津和が主将を務めることが出来たのは、何よりもその体格である。
身長は2メートル近く体重は100キロを超えていた。
いやでも記憶に残る。
しかし、疑問だ。
紲が久津和を知っているのは分かる。
だって久津和は有名人だから。
では何故、久津和は紲を知っているのだろうか。
「何故ってお前、俺が唯一負けた奴だからだよ」