4、胸を反らす運動し、悪役令嬢は悪役を演じる
皆様ごきげんよう。朝というのもはばかられるほど早い時刻に、父に爆弾発言をされた私ですわ。
ただいま、令嬢らしく振る舞うため鏡の前で自主的トレーニング中でございますわ。
でも扇子を持って格好をつけてみても、心の中で『ですわ』を付けても令嬢らしく見えませんの……どこかおかしい。
「はぁ、学校か……」
私、学校苦手なんだよね。
虐められてたわけじゃないと思うけど、教室がね〜。
入っちゃえばどうっていうこと無いのに。
クラスメイトが苦手で教室より職員室の方が落ち着いたし〜。
なんで?って聞かれるのがたまらなく嫌だった。
自分だって分かんなくて答えられないから。
家族にも先生にも理解があって、無理をしなくても良いと言ってくれて。
でも自分が頑張れないから、普通みたいに学校に行けない。
そんな思いがいつもあった。
悪意の無い言葉だと分かっていて傷つく、悪意があっても傷つく。何も無くても傷つく。
すぐに傷つくガラスハートなんです。
しかも、今世の学校は貴族の集まりで悪意のオンパレード。
中身ド平民精神とうふの私に太刀打ちできるでしょうか。
変な事しでかす自信しかない。
のごぉぉ、もう既にお腹がコルセットによって痛いです。
しかも自分、貴族令嬢なんて見た事ないっすよ。
家の人たちは自分らしく自然体でいればいいとか言いますけど、自分ぶっちゃけヴィクトリーヌじゃないんですぅぅぅ!!!
昔習った事、全部綺麗さっぱり覚えてないんですぅぅぅぅ!!!
絶対、陰口叩かれる自信がある。
陰口って何となく分かるんだよね。
でも何となくだから本当に言ってるかどうか分かんなくて、何となく嫌な気分になる。
ああ、悪役令嬢ヴィクトリーヌなら気にしないで楽勝なのに!
よく考えたらゲームのヴィクトリーヌが言ってる事、若干正しいんだよね。
超高級のドレスにお茶こぼされたら怒るの当然だし、婚約者の浮気相手に「別れて」って言うのも分かる。
自分だったら言えないけどね。
ヴィクトリーヌすげぇ。
ヴィークトリーヌ……
私は扇を持ち直し鏡に向かって不適な笑みを浮かべる。
「あら、平民ごときが私に口をきくなんてどうかしてるのかしら?」
おまけでクスクス笑う演技もつければ、まごうことなき悪役令嬢ヴィクトリーヌ。
うん、いけるかも。
見た目ヴィクトリーヌだし。
今、なにげにさらっと凄い台詞が出て来たのは、悪役令嬢もの読んでたおかげかな。
ふっ、ごっこ遊び歴十五年なめんなよ!!
兄とアドリブだけで掛け合いやってんだからな!
ありがとう兄、高三にはかなりキツい修行だったろう。
おかげで貴方の妹、虐められずに済みそうです!!
早速練習しなきゃ!
パターンを作っといた方がアドリブやりやすいしね!
次は腰に手を当てて、胸を張……ってむね無い。
いやいや、ゲームではもっとあったんよ?
たぶんこれから大きくなるんだ。
きっとそうだ……
このポーズは辞めよ……