演技派
「おーし、つかまえたー!」
「あーもう足は敵わないな」
「じゃつぎ太郎が鬼な!」
「わかった!」
太郎はおもむろに上着を脱いだ、一度大きく息を吸い込むと丹田に力を込める、まず髪が逆立った、次に周りの空気が震動し、熱を帯びぐにゃりぐにゃりと歪む、まるで高出力のエンジンがそこにあるよう、太郎の体に変化が現れる!白い肌に血管が浮きあがり体色が青く…黒く…、体が膨張し始め白目を剝いたその表情はもはや小学生のそれとは思えなかった、爪が伸び体を掻き毟り出す太郎、体の膨張はいまだ臨界点を迎えず筋繊維は高密度に圧縮しながら成長を繰り返す、しかしそのスピードは時間と共に比例し、今や元の体格の二倍、三倍へと…、毛髪が変化し歪な二本の塊へ変形、先端は鋭利だ。
太郎は先ほどまで鬼だった友達をむんずと捕まえると一呑みにした。
げぶッ、と喉をならすとズシンズシンとどこかへ消えた。