喜劇1
午後、五時半を回ろうとしている。
チクタクと、夕暮れが差し込む教室の時計の秒針がリズムを刻み。それはタイムリミットを表してるかのよう。
教室に男子1人、緊迫した表情で黒板を睨みつける。
何をするわけでもなく、黒板の『文字』を睨みつける。
そこには、
『一宮涼太。生徒会長直々に話が(σ・∀・)σアルアル』
…………意味が不明だ。
涼太自身、悪さをしたわけでもない。高校2年間を平凡に過ごしてきた筈だ。
成績は努力しているが中の中で運動神経も平均的だ。
だから多分だが悪い話じゃないと理解は出来る。
しかし、それとは別の所に緊迫の表情を浮かべていた。
『(σ・∀・)σアルアル』
……罠か?
この学校の生徒会長は誰もが目にしたことがある。
成績優秀で才色兼備、漫画にでも出てきそうな人だ。
それに、会長の家は剣道の道場でもあるらしい。
だから言葉使いは堅い。
そんな人が黒板にこんな『(σ・∀・)σアルアル』なんて書く筈がないのだ。
涼太がその黒板の文字に混乱している中、教室のドアがスパンと開く。
「貴様!見ているなっ!」
そこには、背景に『ズギュュュューン!!!』とでも書いてそうなポーズをとっている会長が居た。
「えぇっと……生徒会長って………いや、そんなはずは無いはずだぞ?いやでも………」
しかし、涼太には効果は無かった。
混乱に混乱を与えても意味はなさない。
すると、会長はそのままの格好で喋り出す。
「貴様か?一宮涼太とは」
「あ、ちょっと待ってください」
「そうか、済まないな。とでも言うと思ったか?」
「え?あ、あぁ………えっと………」
ちょくちょくと涼太は反応を見せるがまるで効果が無い。
仕方がなく会長はポーズを辞めて教室に入り、涼太の肩を掴む。
「一宮、君に頼みがあるんだ」
「お断りさせて頂きます」
「何故だっ!?」
涼太にはある理由があるからだ。
それは、
「恋愛絡み………じゃ、ないんですよね?」
その言葉に会長は目をパチクリさせ、口が少し開く。
「………は………?」
そんな会長の表情を見た涼太はキヒッと小さな笑みを浮かべる。
それは涼太にとっての自己交渉で、その交渉で会長からの仕事を受けることを決めた。
「……OKですよ?会長。僕は今から会長を操る『パペットマスター』になります」
「い、一宮……どういう事、なんだ?」
会長は少したじろい。頬に冷や汗が一滴伝う。
「どうもこうも、会長は誰かに『恋』をしたんですよね?だからこの僕に、恋愛成就のハートレスに会いに来たんですよね?」
涼太はキヒッと笑い、会長から見たら一宮涼太の面影には闇のように暗く、その中には相手を隅々まで観察している様に見えた。
今回、恋愛成就のハートレスはちゃんと完結まで書こうと思います。
ですので、これから宜しくお願いします。