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習作

【習作】救済、あるいは破滅へ

作者: さとう

 思い返してみても、また、今現在においてもずっと独りきりであった。

 現状を受け入れたとはいえ、常にこの想いを誰かに打ち明けたいと願い続けている。しかし、周りには誰もいない、捌け口のない悩みは肥大する一方だ。

 そして、それを認識するたびに悩みを消そうと暖かな夢を見、淡い希望に胸を焦がす。だが、現実にはどこまでも冷たい壁が立ちはだかり、同時に、言えもせぬ苦しみによって押しつぶされていく。

 悩みの深さは苦しみの重さによって抉られていく。その深淵の名は孤独。


 やがて気が付くと、深淵の底に降り立っている時がある。そこでは寂滅の地平から、すべての感情を剥ぎ取るような冷たい風が吹き荒び、胸の虚空を通り抜けてゆく。

 身を震わせながら、何もない物悲しい景色の中で目を細め、光り輝く希望がないか寂寞の未来を見つめるも、暗い帳が覆い被さりなにも見えない。

 振り返り深淵の暗闇に潜むであろう過去を望むが、何もかもが遠く離れ、ここに孤独だけを残して消えてしまった。

 過去と未来から切り離され、記憶と希望からも断絶されると、ついで現在を見失う。所在の怪しげな私は、時間とともに存在の輪郭が虚空のなかへ溶けてゆく。

 そうして失われた私は存在を求め、当て所ない孤独の荒野を彷徨うが、目的の地点は見えず、いつしか始まりをも忘れてしまい、なにもかもが忘却の果てへと散ってしまう。


 韜晦の意志はなく、存在を求める言葉を叫ぶが、それは、心の脆さと希薄な意識を糾弾する戒めにも似た、私自身への呪詛でしかなかった。

 誰にも届かない声を発し続ける、孤独を払拭する慈愛の稠密された心を求め。

 終わりを願う傍らで、孤独からの救済を、救いの手が差し伸べられることを願い、自家撞着と知りながらも虚しく行為は続けられた。

 

 少しずつだが、確実に冷たく衰退してゆく。どこまで落ちていったのかもわからない。

 願わくは救い、あるいは終わりを。

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