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「喜媚(きび)団子を発明したわ」

※未完です。一週間以内には完結します。(←無理でした。完結はします)

 やっぱり私は天才だったわ。授業中の内職でこんなに素晴らしい物を発明してしまうなんて……自分自身の才能に感動さえ覚えてしまう。うふふ、これであの野望も達成できるわ!


「おい、呂子!」


 私が自分の素晴らしさに酔いしれていると、隣から凡人ボイスが飛んできた。顔を見なくてもわかる、声の主は明尾錦あかおにしきだ。

 この男は子どもの頃からの顔見知り、いわゆる幼馴染って奴。明尾は大した能力は無いし顔も別に格好良く無い。運動も勉強もその他ありとあらゆる事に長けていて、オマケに美少女の私と違って集団に埋没するタイプのモブキャラだった。

 ちなみに小学生の頃のこいつのあだ名は赤鬼。理由は名前が”あかおに”しきだから。……どうでも良いけど。そう、どうでも良いのこんな奴、だから当然こいつの呼びかけなんか無視する。


百田呂子ももたろこ! 無視すんじゃねぇ!」

「うるさいわね」

「授業中に何ニヤニヤしてんだよ。きしょっ」


 きしょっ、ですって? モブキャラの分際で私を愚弄するなんて片腹痛いわ。


「凡人よ黙りなさい。私は世紀の発明者なの。偉大なる歴史を切り開く存在なの。貴方程度の雑魚が私と等しく口を聞こうだなんて許されるはずないわ」


 昔からの知り合いだと言うよしみで普段から会話などしてあげているけれど、彼みたいな雑魚キャラは私とは住む世界が違うのよ。


「お前、だから今授業ちゅ……」


 明尾が私の後ろを見て目を見開いた。振り返ると英語の教師が睨みながら立っていた。


「お前ら廊下な。ダッシュで今すぐな」



 私に命令を下そうだなんて、あの教師も良い身分なものね。いったいどういう教育をされてきたのかしら。


「納得がいかないわ」

「そりゃこっちの台詞だ。何で俺まで一緒に廊下に出されるんだよ!」


 廊下に立たされるなんて屈辱だけれど、これですぐにでも発明品を試せるんだから都合が良いわ。

 そうと決まれば早速行動あるのみね。


「お、おい呂子! 何処行くんだよ」

「貴方に行き先を告げる義理など無いわ」

「待てって! おい、また何か変なことやろうってんじゃねぇだろうな」


 そう言いながら明尾は小走りでこちらに向って来た。

 明尾ったらなんて愚かな事を言うのかしら。これだから脳みそ卵肌野朗は困るわ。


「我が野望を達成しに行くのよ」

「何じゃそりゃ」


 こんな事すら理解できないなんて……本当に、昔から頭が悪いのだから。

 懐から世紀の大発明を出し、明尾に見せてやった。


「何だこれ、団子?」

「そう、喜媚団子きびだんごよ」

「は? きび……?」

「喜んで媚びる団子と書いて喜媚団子。これを食べれば誰もが喜んで私に媚びまくる様になるの!」


 明尾は黙り込んだ。きっと私の発明が素晴らしすぎたせいね。


「……で、お前の野望ってなんだよ」

「イケメンと美少女ハーレムを作ることよ」


 再び明尾は黙り込んだ。きっと私の野望が素晴らしすぎたせいね。


 私の様な優れた人間の周りには、それを飾るやはり優れた人間が侍るべきなのよ。つまりハーレムね。

 イケメンや美少女と言っても、ただ顔が良いだけでは駄目なの。顔も美しく、なおかつ性格や能力など優れた物を持つ子こそが私のハーレムには相応しいのよ。


「またくだらねぇ事考えやがって!」


 くだらない? 明尾の奴ったら今私のハーレム作成計画を下らないと言ったの? 信じられないわ。


「だいたいお前は昔からいつもやる事が無茶苦茶なんだよ! お前が思いついた事何でもかんでも実現しようとするせいで俺はこれまで何度も死にかけたんだからな!」

「そんな事あったかしら」

「覚えてねぇのかよ! 例えば小三の頃の冬、雪だるまのバランスがどうしても上手くいかねぇからってお前、俺を雪だるまの柱にしたよな」

「……ああ、そんな事もあったわね」


 中に人を入れればバランスが決まると思ったの。実際、明尾を中に入れることにより良い感じの雪だるまが作れたわ。


「結果的にあれは成功を治めたじゃない」

「成功したのはお前だけな! 俺はあの日から風邪で三日三晩苦しんだんだぞ!」

「成功には犠牲がつき物よ、偉大なる成功の犠牲になれるなんて喜ぶべき事よ」

「んなわけねぇだろ! あれで喜べるとかどんだけどMなんだよ。それに小四の夏休みのあれもそうだろ……」

「何かあったかしら?」

「こっちも覚えてねぇのかよ! お前カブトムシが欲しいって言って、でも蜜を塗るのにちょうど良い木が無いってからって……」

「ああ、そう言えばあの時貴方に木の変わりになって貰ったわね」

「そうだよ! お前のせいで体中蜂蜜だらけにされて、アリに集られて大変な事に……! あいつら噛むからな、しかも体は小さい癖に意外と噛む力つえーし!」


 明尾はその時のことを思い出したのか、顔を青くした。

 虫ごときがトラウマになるなんて、男の癖にだらしない奴だわ。


「俺はもうお前に付き合わされて酷い目に遭うのはごめんだからな!」

「じゃあ付き合わなきゃ良いじゃない」


 今回のハーレム作成計画について来てなんて頼んで無いわ。


「放っといたら心配だからに決まってるだろ!」

「……あら、私のことを心配してくれるなんて貴方にも多少良いところはあったのね」

「心配なのはお前じゃなくて周りな」

「私を心配しなさいよ」

「お前は大丈夫だ。世界が滅んでもお前だけは生き残っている気がする」


 それはどう言う意味かしら。

 おっと、こんな凡人に構っている暇は無いわ。一刻も早くハーレム作成のために動かないと。

 ハーレム要員はふんわりとだけど目星を付けてあるの。まずは誰から当たろうかしら。……そうね、彼にしましょう。確か彼は今体育の授業中だったはず。

 私は喜媚団子を大事に小脇に抱えながらグラウンドへと向かうことにした。


「ちょ、おい! 呂子! お前俺の話聞いてなかったのかよぉぉ!」


 後ろから雑魚の叫び声が聞こえた気がするけど雑魚なので気にしないことにした。

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