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菊とコスモスのあいだ
――キバナコスモスって菊とコスモスの中間みたいだよね。
公園のベンチで隣の彼女がふと呟く。
視線の先ではオレンジ色の花が九月の陽射しに花びらを透かしつつ揺れていた。
――もともとコスモス自体、キク科だからね。
一般的なコスモスは確か大春車菊とかいうはずだ。
――そうなんだ。
僕の答えに彼女は苦笑いして薄ピンクのマタニティ服のお腹を撫でる。
――秋桜って漢字で書くし、ピンクや赤のイメージがあるから、あん
まり菊って感じがしなかった。
その意味では、確かにオレンジのキバナコスモスの方が本来所属するキク科に相応しいかもしれない。
――コスモスは独立してコスモスって感じがする。
そう語りつつ僕の緑のシャツの肩にいつの間にか落ちた小さな銀杏の葉を取る。
まだ縁しか黄色くなっていない。
――僕もそんな気はするよ。
鮮やかなオレンジの花びらに秋の穏やかな陽を受け止めるキバナコスモスもまた、誇り高い花のサラブレッドじみて見える。
――そろそろ時間。
彼女が立ち上がる。すぐ向こうが病院だ。
今日の検診で僕らの子供の性別が分かるかもしれない。(了)




