32/49
真ん中は君だよ。
――ハチミツ、いっぱいかけてえ。
三歳のメアリが金髪の巻き毛を揺らして甘え声を出す。
――はいはい。
七歳のフランは妹のホットケーキにたっぷりとオレンジ色の蜜を垂らした。
金髪の巻き毛、空色の瞳、薔薇色の頬。
お揃いのネイビーブルーのワンピースを纏った二人は拡大図と縮小図のように似ている。
――ケイトはメイプルシロップだったね。
僕の言葉に五歳のケイトは伏せていた黒の瞳を上げた。
そうすると、真っ直ぐな黒髪が重たげに垂れた。
グレーのハイネックを着た顔は雪のように白く、小さな唇だけが血のように赤い。
――ありがとう、パパ。
静かに低い声が答えた。
小さな白い手が透き通った琥珀色の蜜を器用に自分のホットケーキに掛ける。
三姉妹なのに、真ん中のこの子だけは似ていない。
――ただいま。
――お帰りなさい、ママ!
金髪の二人が駆け寄る。
戻ってきた妻は僕らを目にすると、切り揃えたばかりの黒髪をかきあげて笑った。
――貴方とケイトはいつもメイプルシロップね。
真ん中の娘は姿は妻と生き写しなのに、味の好みは僕そっくり。
――不思議ね。
僕と同じ金髪の娘二人が笑った。(了)




