十三回目。チョーカー。
こんばんわ。
最近リアルが忙しいので投稿の不定期差が凄いです
読者様には申し訳ありません
駄文ですがよろしくお願いします
十三回目
「…ここで間違いないはずだけどどうしてここなんだよ」
「…?」
メルに何を言ってるのか分からないという顔をされた。
再度地図を見直し指定された屋敷の場所を確認するがここだ。
歩きながらまさかとは思ったけれどマジか。
昨日受け取った防具をしっかりと装備して万全の体制できたが…うーん。
因みに防具は変形で見た目は初期の布の服に厚手のズボンとなっている。
中身は製作者の傍迷惑な愛という名の呪いが付いたSランク防具ですけどね。
とりあえずどう考えてもここは…俺達が来ていい場所ではないんだよなぁ。
「サンディール邸ねぇ…俺が全員殺った連中の雇い主だよ」
「そういうことね。依頼放棄は…しないわよね」
「正直したいけど…もう無理だろうなぁ…」
多分今回の依頼は相当切羽詰まったモノなんだろうな…もしかしたら…俺、死ぬかも。
依頼の受諾標を門番にいた見張りの兵士に見せて中へと続く門をくぐる。
そんなビビりながら確認しなくても良いだろうに。
奥へ進み屋敷の中に入るとそこにはタチの悪そうな連中や奴隷らしき使用人がウロウロとしていた。
内装はよくある豪邸のような感じで結構良いのだがその雰囲気をぶち壊してる奴らがいるのでアウトだ。
まぁコイツ等も雇われってところだろうな…実際は知らんが。
何人かはこっちを見て引き攣ったような顔をしたり奥に引っ込んで行ったが…まぁふつうはそうなるわな。
「なぁメル…お前だけやっぱ帰れ」
「イヤ」
「…死ぬかもよ?」
「一緒に死ぬ」
「…じゃあ頑張るか」
近場にいた使用人らしきメイドに声を掛けて依頼について話すと応接間へと案内してくれた。
応接間という割にはかなり広めで多分宿の部屋よりも広い。
ソファーに座って待っているとコンコンと扉をノックしてメイドと一緒に男性が一人入って来た。
「君が血濡れの銃剣士、ソーマ=フルカワか」
「はい、私がソーマでコチラは相方のメルフィです」
席を立ち、お辞儀をしながら挨拶と自己紹介をする。
メルもそれに合わせて立ち上がり軽く会釈をした。
「そんなにかしこまらなくて良いぞ。キミはもう下がって良い」
「はい、失礼します」
メイドを下がらせ俺達の前の席に座るのを見てから席についた。
「私がジョルノ=サンディールだ。堅くならずに聞いて欲しい。君の腕を見込んで頼みたい依頼だが…」
「その前に一つだけ…なぜ俺を指定した?」
目の前に座る依頼主であるサンディールを睨みつけながら聞く。
依頼主にこのような態度を取るのは勿論御法度だが今回はそうも言っていられない。
もし私念などでこの依頼が仕組まれていたのなら溜まったものでは無いからな。
だがそんなことは気にしなくても良かったのかもしれない。
「あの時の件については済まなかった…上に立つ私のミスだ。以前から奴等はウチの中でも荒れていた連中なのだがあそこまでだったとは…調べ上げたら余罪が山のように出てきてな。奴等の派閥の者は全て消させもらったよ」
頭を下げながら謝罪と共にそんな事を言い始めるのでなんかこちらが悪いことをしたような気になってしまった。
やっぱりあいつ等は本物のクズ野郎どもだったのか…まぁあんなことしてるんだからそうだわな。
「そう…ですか」
「あの時のことは全面的に此方に非がある。許して貰いたい」
「はい、分かりました。話の腰を折ってすみませんでした。依頼の方をお願いします」
そう言って話を進めてもらおうとすると先ほどの雰囲気から打って変わって真剣な空気が漂い始める。
思わず背筋を伸ばし姿勢を正してしまったが仕方が無い。
「ああ、そうだったな。依頼なのだが内容はあんなものではない…事態はかなり深刻だ」
「と言いますと?」
「君達は私がしている事を知っているか?」
詳しくは知らないが雇われの傭兵の派遣などをしているはずだが…表向きだけであって実際は裏で何をしているのか…?
「傭兵の派遣などをしている事ぐらいしか…」
「その通りだ。先日、その傭兵達が向かった派遣先で全滅した」
「「えっ?」」
「一体何と殺りあったのですか?幾らなんでも一人も生き残りが居ないなんて…」
「私が引き取るつもりだった奴隷の竜人族の者だ」
なるほど…確かに竜人族と殺りあうならそれなりの戦力が無いと無理だろうな。
だけど奴隷?が何のために主の傭兵を全滅させたんだ?
「何故…奴隷がその様な事を?」
「チョーカーによる"精神暴走"が起きたのだよ。私が少しばかり遅れを取ってしまったばかりに…」
「…精神暴走?」
どうやらメルもこの現象については知っているようだ。
精神暴走。
服属のチョーカーによる精神汚染が原因で起こることがある副作用の一つだ。
勿論そうなれば自我などはある筈も無く、ただひたすらに破壊を続けるだけとなる。
自我がなくなるということはリミッターが外れているのと同然だ。
身体能力は限界まで引き出される為戦闘能力は倍以上になっていると思っていたほうが良い。
そして厄介なのはそこに知性が加わるという事。
単純に身体能力が高く暴れるだけならば幾らでも手はあるが知性があるとそういう訳にも行かない。
一応元に戻すにはチョーカーを外す事が条件になるのだが…これが癖物で無理に外そうとすれば爆発で首と胴体でオサラバしてしまう。
なので暴走してしまったら基本的にはその先に待つのは死のみだ。
だけど俺は今回このチョーカーを破壊しての救出を考えいる。
「どういうことですか?」
「ああ、その奴隷なのだが元はただのアイン級奴隷だったのだ。だが前の主に反抗的だったらしくてな…チョーカーを付けられしまったらしいのだよ。だが調べてみるとその主に反抗的だったのはソイツに犯罪の片棒を担がせようとしていたからでな…そこでソイツを引き取って何とかしようと思っていた矢先にこの事件だ」
「…ではまだ正確にはあなたの奴隷では無いのですか?」
「今は主無しの野良状態だ」
「…分かりました。では私がもしその奴隷の解放に成功したら自由にさせてください」
「良いだろう。解放、抹殺のどちらでもいい…死んでいった私の部下の為に頼む」
「任せてください。場所は何処でしょうか?」
「…王都の外にある地下街は分かるか?」
「はい」
「そこの三階層にある屋敷に居るはずだ」
三階層か…確か奴隷商の階だったはずだ。
と言う事はもしかすると血の海が広がる地獄絵図が待っているかもしれないな…
「メル、すぐに出発する。行くぞ」
「分かったわ」
「では失礼します」
挨拶をしてそのまま部屋から出ると先程のメイドがドアの横で待機していた。
"ご案内します"と来た道を戻り玄関先まで連れて行ってくれる。
ありがとうとお礼を言って俺達は邸を後にした。
「三階層…あそこに行くのね」
「メルは行ったことが…悪い」
「気にしないで。私はあそこに行ってすぐにミュリエル様に引き取られたから何もなかったし」
「そっか」
まぁあそこだって全てが悪いわけじゃないからな。
普通に立ち並んでいる奴隷商の店は健全なものばかりだし。
もはや自宅かと思わせるほど長く滞在している宿へと戻り、旅の支度を整える。
とは言ってもアイテムバッグを持っていくだけなので実際は準備もクソもないのだが。
「出発は悪いけど夜にしたいから今のうちに休んでおいて。俺は…ちょっと外に出てるよ」
「ソーマは一緒に寝ないの?」
「あー…休むけど用があるんだよ」
「ふーん…」
ジト眼でこちらを見てくるメル。
ここで目をそらしたら負けだと思うのでじっと見つめ返す。
しばらくそのままの状態でいたらメルが折れて視線を逸らしながら溜息をついた。
「はぁ…好きにすればいいんじゃないかしら?私はもう寝るから」
「…ゴメンな」
「許してあげないわ…私は平気なのに」
ベッドに潜り込みそっぽを向いてしまったらメルに謝罪の言葉と頬へのキスをしてそのまま部屋を後にする。
これはまた後でお説教がありそうだなぁ…今回も俺が悪いので甘んじて受け入れるしかないけど。
だけどこればかりはメルの負担になってしまうので言う訳にはいかない。
もしかしたら気付いているかも知れないがそれでも駄目だ。
気後れはするが俺にはどうすることも出来ないので仕方が無い。
適当に外に出た俺はターゲットとなる女の人を探すべく人通りの少ない道をフラフラと歩く。
そう、今日は月に一度の満月。
俺にとっては一番面倒でこの上ない日だ。
「…今宵は満月。我の為に血を捧げよ…なんてな」
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